黒い渦34
「お母様──!!」
「無事で良かった……」
オールスローンへと向かう最中でヒノモトからの連絡が入り、ヒノモトから出発した船団と途中で合流を果たせていた。
そして、今は僕とナビはハクの乗りつつ──皆をヒノモトの船団……マリの母でありヒノモトの女王のノーラさんの船へと降ろしていた。
抱きしめつつ、ノーラさんはこちらへと見やり頭を下げたのでハクと僕らも頭を下げ返していた。
「それで、状況はどうなってるのです……か、父上」
「あ、あぁ──」
少しだけぎこちなさが残りつつも、お互いに歩み寄ろうとしてるのが分かるようにバルとハンネス──今はハンネスはノーラさんの下で懐刀……、もとい暗部の組織のトップとして動いていた。
「諸外国からの通信や回線がそれぞれの龍が解放された影響か回復──いや、開かれている状況だ。ロイアに関しては漆黒の龍が既に飛び立ったと、リカニアは後少しで──チェニスとイーリスはそれぞれ既に向かっていると連絡が入っている」
ハンネスが周りの者へも聞こえるように説明してくれていた。
「じゃが……その話しは本当かの? オールスローンの大星の龍はその土地自体が龍のサイズだというのは?」
「うん、お爺ちゃん──ハクはそう言っていたよ?」
「そこのところ、どうなんだ?」
ドルマンとリン──そしてリンの兄のイアンの視線がハクへと向く。
「見てみれば分かる。これだけは口で説明しようにも我には難しい」
けれども、ハクは肯定……するというよりは首を少し振りつつ周囲へとそう言うのに留めていた。
まぁ、自分だって分かる。
あのオールスローンのサイズ……旧オーストラリアと呼ばれていたと記録には残っていた土地が全て龍のサイズだと言われても想像が及ばない。
「チェニス──イーリス……漆黒の龍が見えてきました!」
そんな相互に話しては時が進むなかで船員が連絡をしてきていた。
確かに前方にイーリスの艦隊と飛行船団、チェニスの人達──そして、漆黒の龍も見えてきていた。
「ふむ、リカニアはもう暫く掛かりそうか──」
イーリスの女王エリザベスさんが呟いているのが聞こえてくる。
チェニスからは僕たちを見送ってくれた将官の方が、ロイアからは漆黒の龍に乗って途中まで来てはイーリスと合流して、そちらに降りていた──なんと、エルまで来ていた。
エルは代表者として急な会議に参加していて固まっていたが、途中からはマリがヒノモトとして途中参加しては緊張が解けたのか少しずつ話し合いはスムーズになっていっていた。
「やはり、リカニアは掛かるか……だが、ハク? なんだか、お主の性質が変化していないか?」
「む?」
「あぁ、私には分かります──多分ですが、シエル様とナビ様の力が少しずつですが……混じりあったのだと」
「それなら、もう僕から見てもハクは白銀とは言えないんじゃないかな?」
「我はもう白銀ではなく、ハクと名を貰ってるからな」
「ちぇ……つまんないの」
「こら、漆黒の……ふてくされるのではない」
「ふふ──私たちがこうやって邂逅出来るなんて思いもしませんでした。お互いに見知ってはいたし、感じていたのに遠く感じてましたから」
どこか遠くを見てるように深海の龍は視線を遠くに向けていた。
「だとすれば──本当に皆が邂逅するならばあいつを解放しないとな」
そこにチェニスの守護龍の暴風の龍が呟くと視線が皆オールスローンへと……いや、大星の龍へと向いていた。
「我らの力がどこまで及べるか……」
「やるしかないんだろ? なら、僕はやるよ……あの子を悲しませるのは嫌だしね」
チラッと漆黒の龍の視線が今も会議で少しだけ緊張が解けて来ていたエルへと向いていた。
「少し変わったのね──いえ、元からあなたは優しい……」
「──う、うるさいなぁ! い、いいんだよ僕のことは」
そんな漆黒の龍を見て口を開いた深海の龍の言葉を漆黒の龍は慌てたように中断させていた。
「シエル──」
そんな中でハクも視線を今はヒノモトの女王の飛行船の船首部分で立ってはオールスローンの方向をナビと見ているシエルへと視線を向けたのだった。




