『巡り会うもの達⑩』
1つの信念を貫いている人を
時に、人は”変人”というカテゴリーに括ってしまう
ふぅ・・、落ち着いてきた。
あれから、少しだけ、意識が遠いのいていたようだった。
椅子に座れていてよかった。
(「・・・」)
ナビさんの、なんだか申し訳ないっていう空気を感じるけれども・・。
と、とりあえずは、あれだ。
寝具・・、選ばないとだな。
ーーー
(さて・・、どうしたものか)
(「あの・・、シエル様。1点、気になる寝具があります。それ以外にも、同じ”系統”で気になるものが数点あります」)
ふむ。
なんかね?
とりあえず、ナビからの情報を得ながら、オーナーさんに話を聞いてみる事にする。
『あの、すみません。少し気になるものがありまして”ブリッケンさん”の商品なのですが・・、一通り見せて貰えるでしょうか?』
”え!?あの・・?”って、明らかにオーナーさんが狼狽えるのを横目にシュンを見たら、シュンも”えっ?”みたいな、先ほどとは顔の表情は違うが、鳩の豆鉄砲の時のような顔を、隠しもせずにしていた。
「こちらになるのですが・・、あの・・?大丈夫ですかね?」
オーナーさんに案内されたのは、店内の奥の”更に奥”の区画で、どうやら”ブリッケンさんエリア”みたいになってる様だった。
「シエル・・あの、余り言いづらいが・・」
シュンは申し訳なさそうな顔をしながら、”ブリッケン”についての話をしてくれた。
ーーー
【ブリッケン】※魔具職人
その商品は、多岐に渡る。
魔具というものなら”何でも”作っている。
そして、その技量は確かであり、腕もトップクラス。
ただ”一点”だけ問題があり、その影響で評価が著しく下がってしまっている。
その一点とは、全ての作品に”すべての魔法紋”を刻印してしまうというもの。
「ロマンなんだ、これだけは譲れない」
それが信念のようで、譲らない。
すべての魔法紋ということは、別個に刻印しているなら、まだ良かったかも知れないが、綺麗に重ねて、全ての紋を刻印しているのだ。
見るだけなら、とても素晴らしく綺麗で、珍しいという事で購入する好事家は居るが、使用するという点においては”魔力が分散・効率が落ちる”のは目に見えているので、誰もその目的では求めるものが居ない。
但し、その精度・商品自体の品質は確かなので、本当に嘆かわしく思われている・・、との事。
ーーー
「シエル・・?そんな、変わり者の作った商品なんだぞ・・?”全ての回路を使える人”なんて居ないし、それに、そんな事を出来るやつなんて、聞いたことも見た事もない。1つのみの回路を使うなら、使いものにならないぞ?」
シュンの言葉に頷きながら、自分は別の事が、頭によぎっていて、ナビに確認をする。
(なぁ、ナビ。さっき、すべての回路を発現するのはお勧めしない、とは聞いたけれども・・。これは”黒い渦”の予測とは違うのか?)
(「難しいところだと思います。ただ、考えられるのは”程度”の問題かと」)
”絵の具”と似ているというのが、お互いの突き詰めた中での結論に至った。
”黒い渦”と言われてるけれども、現実に真っ黒かとは未だに分かっていないのと、全ての色を同じく混ぜたら黒に近くなり、ただ、それぞれの色でも、バランス次第では色は変わるはずで。
すべてを発動したとしても”配分次第なのでは?”と、お互いに確認をする。
それに・・と”想像力・発想力”そこも、個人の”願い”も、大きく作用するのではないか?と。
(願いね・・、ていよく言えば”選択”っていう事か、また選択か)
うん、でも、今はとりあえずだ。
『いや、シュン。僕にはこれが”合ってる”と思うんだ』
それ以外の”ブリッケン”さんの作品・及び、商品があれば欲しいとオーナーさんに伝えたら”えっ?!”っという、シュンの驚いた顔を横目にして、オーナーさんも見たら、シュンと同じく、大変驚いていた。
とりあえず、心の中で、両親の遺産の中にも、同じ種類の家具などはあったのだけれども、申し訳ないと思いつつも、購入手続きに入るのだった。
”ブリッケン”
”彼”は謎に包まれている
そして、彼の商品は、時たま流通に流れてくる
但し、全ての商品に”すべての魔法紋”を刻印してだ
かの者との邂逅は、果たしてあるのだろうか




