黒い渦33
「む──俺はそうか……思い出した」
ハクに支えられ起きた灼熱の龍が頷きながら、こちらを見やる。
「感謝する──」
そして、こちらへと下げた頭を上げてはジッとこちらを何かを待つように見てくるのだった。
「はぁ──我らだと察せられるが普通は話さんと分からんぞ?」
「ん? そうか、そうだな。失念していた──俺も分かってる、その話しも含めるとオールスローンへと急がないとならないよな? 俺も行こう」
「いえ、しかし──その身体では……」
「問題ない──!」
「おお! 流石、俺たちの守護龍様だ! そこに痺れるぜ!!」
ハクの心配の問いかけに勇ましく灼熱の龍は応えていたが──その身体と精神の損傷は目から見ても分かる。
ナビが心配の声を掛けるが二言はないと言いたげな勢いで灼熱の龍が応えていたが──そこに何かを強く感じたのかリカニアの人達は大いに感じ入ったのか拳を振り上げては声を上げていた。
「では、灼熱の龍よ──我たちは先へ行くぞ」
「あぁ、白銀の……いや、今はハクと名乗ってるのか。待ってろ! すぐに追い付くからな!」
「お前ら──!! 元帥の命令だ! 早急に支度するんだ!」
「「オォオオオ──!!」」
ハクと灼熱の龍が別れの言葉を済ませてる間にはいつの間にか、リカニアはオールスローンへと向かうための準備を早急に始めていた。
『ローレンさん──』
「あぁ、分かっているぞ。ワシもすぐにシエル殿たちに追い付こう。助かったぞ──ふっ、世界が正常になった暁にはワシと一杯やろうじゃないか」
『はい……!』
「お主たちも気を付けて」
「世界が正常に戻ったら……私から──いえ、ヒノモトとして挨拶に伺いたいと思います」
「あぁ、わかったぞ。約束じゃな」
ローレンさんとマリは握手を交わしては離れていく。
「皆様──急ぎましょう……そんなに長くない気配がしています」
ナビがハクへと向かいつつ、僕たちを呼ぶ──その声には緊張感が混じっていた。
遠く──そう、遠くのオールスローンの方面からより一層強く濃くなった黒い力の気配が漂ってきていた。
ただ、灼熱の龍が解放された事でオールスローン以外のエリアはそれを寄せ付けないように結界が再度張られているのも感じられた。
「皆、乗ったな?」
『あぁ、大丈夫。ハク──頼む』
「急ぎ、向かうぞ──!」
ハクが羽ばたくとその巨体が浮上していく、そして離れたところからはリカニアの人達の歓声も聞こえてくる。
それをすぐに置き去りにするようにハクは再度大きく羽を羽ばたかせてはオールスローンへと僕たちは急ぎ向かうのだった。




