黒い渦32
「ッ──! これ以上はすまぬ! 近寄れん──!!」
ハクが声をあげる。
近寄れない──のはきっと自分達を乗せてという前置きがあるのだろう。
灼熱の龍へは眼前に迫っていた。
それと同じく、灼熱の龍はブレス以外にも熱線の攻撃も多用してはこちらを──ハクを追い詰めて行っていた。
『ありがとう──ハク! 後は自分達で行く──!』
「わかった──! 気を付けよ!」
「ハクの方こそ──多少ですが……」
自分とナビがハクから飛び降りて、ハクが距離を離れる際にナビがそっとハクへと回復魔法を掛けていた。
離れながらハクからもブレスを一発──灼熱の龍へと放っては意識を自身へ向けては先ほどより、自分達を降ろしたのもあるのだろう高起動に動いては灼熱の龍からの攻撃を巧みに避けては戦況を離脱して行っていた。
『今のうちにナビ──行こう!』
「はい!」
お互いに手を繋ぎ、白銀と黄金の力を循環させては高めて一気に眼前に迫っている灼熱の龍へと飛んでいく。
灼熱の龍は先ほどまでハクへと意識が向いていたのもあって、こちらへは本当に接近されるまでは気付かなかったようだった。
それも一気に近付いては白銀と黄金の力を開放させれば嫌でもこちらに気付いたようだった。
──けれども、もう遅い。
『ナビ──!』
「はい──!」
解き放つ──!!
お互いに掲げた聖霊剣からは白銀と神の力とも言える黄金も混じりあった力が迸っている。
それを一気にこちらに気付き目を見開いた灼熱の龍へと叩き込む。
「ギァァァア────!!!!」
灼熱の龍の咆哮が周囲へと伝播していくがやがてその声も沈黙になっていく。
そして灼熱に混じっては噴出していた黒い力が浄化されていき──迸っていた焔がその身から発せられるのが非常に弱くなっていき、重ねて灼熱の龍が地上へと落下を始める。
「仕方ないやつじゃ──……」
横からそんな声が聞こえつつ、バサッ──と風の音が遅れて聞こえて来てはハクが灼熱の龍が地上へと接触する前に優しく身体を抱き上げては舞い降りていた。
「ん? 俺は──……」
「今暫くは眠るがよい……」
その言葉を聞こえたのかは分からないが灼熱の龍に纏っていた緊張みたいなものがほどけるのと気を失うのは同時だった。
「シエル様──?」
「────ううん、行こう」
はい──!
と、ナビに応えては灼熱の龍とハクの場所へと僕らも向かう。
ただ、少しだけ──。
ナビは気付いていなかったようだけれども、確かにオールスローン方面からシャドウ──黒い力の奥から発せられる感情のような物の発生源だと思われる存在からの視線を感じていたのだった。
ただ、今はそれを話すのはいくら僕でも憚られた。
ナビに誘導されつつも、僕はハクの下へと向かうのだった。
そして、向こう側からはローレンさん含めて皆もこちらへと向かっているのが降りながら見えるのだった。




