黒い渦25
「シエル様──ハクへの処置は何とか……」
今度は皆へと心配されて見られてる所へナビがハクの回復を終えたのか降りてくる。
ハクの方へと視線を向けてみると、先ほどに比べたら表皮のキズは癒されており、魔力の方も豊潤とは言えないが回復はしているようだった。
「こ──こ……は……、私は──」
そんな時に海面から声が聞こえてくる。
女性的な声は……何とか首を動かしては周囲を見ている深海の龍から発せられていた。
「むっ……目覚めたか……?」
ハクもまだ気だるげなのだろうが首をそちらへ向けては目を細める。
細めたのは深海の龍の状態の確認だろう。
意識が混濁していた様子だったが──徐々にその瞳には知性が宿っていき、最期は柔らかい表情みたいになっていた。
「私は──そうですか、呑まれてしまったのですね……」
「ふむ、どこまで覚えておる?」
そう、呟いた深海の龍へとハクは近付いては海面の少し上でと浮遊しつつ深海の龍へと問い掛けていた。
「いえ、少しずつ、思い出して──いえ、呑まれてる最中は私が私じゃないように私自身が動いていたのです……」
そして、再度目を閉じては回想しているのか深海の龍は長い沈黙が訪れるが──改めて目を開いた時は自分とナビを中心に深々と頭を下げてくるのだった。




