『巡り会うもの達⑨』
〝可愛いは正義〝
オーナーさんとシュンの、お勧めの寝具や、家具の話を聞きながら、整理する。
(魔法紋、…奥が深いな)
全ては〝6つ〝の種類がある。
そこに魔力を通すことにより、魔法を発現させている。
先程の、飛んだのは〝風〝
この、消耗防止は〝土〝
転送もそうだ、…仕舞うのは〝闇〝
取り出すのは〝光〝だ。
術式というが、それは、魔法紋の事に他ならない。
不恰好でも発現はするが、やはり綺麗に刻んだり、書いてた方が、魔力の通りも良くなり、発現する効果も期待できる。
ーーー
(…なるほどな)
この、冷暖房の機能は〝火〝か。
複合させる事で…〝雷〝〝氷〝などの、変わり種も発現させる事も出来るのか。
一瞬だけ、もし〝すべての回路を発動させたら?〝と、思ったが。
(「シエル様、それは止めた方が良いと思います」)
と、ナビからの話があった。
ナビの予測からすると、全てを内包している〝かも知れない〝存在が、既に発現しているとの事で。
聞けば納得〝黒い渦〝だった。
(そうだ)
あれは、ただの魔力を放出しているのかさえ分からないが、〝可能性の1つ〝としては、予測は捨てきれないと思えた。
だが、回路からの魔法の発現は〝想像力〝が必要になると思える。
そして、それを叶える〝魔力量〝と、それに到達するまで維持する為の〝強度〝が必要になる。
【魔力量・回路・強度、そして〝想像・発想〝】
それらが魔法という、ファンタジー溢れる奇跡を発現させる為には必要なのだろう。
(…あれだな)
どこかの呪文を唱えたら、発動してくれるという、お手軽設計は無いのか。
ファンタジーなのか、リアリティーが溢れてるのか。
やっぱり、自分には判断に迷う結果が、そこにあったのだった。
ーーー
「おーい!シエルー?シエル?シーエールー!」
”ハッ”と、振り向くと、シュンがこちらを覗き込んでいた。
「どうしたんだ?」と言う、シュンに、色々と商品があって、迷ってしまっていたと誤魔化しつつ…。
(ナビ、…どうだろう?お勧め、…あるかな?)
ちょっとだけ、ナビに問い掛けている、俺が居た。
(「…!」)
ん?どこか、頼られたのが嬉しいのか…。
ちょっとだけ、弾むような嬉しさのオーラを感じつつ…。
(…感じつつ?)
いや、嬉しそうだな?!
ちょっと、そんなに、ナビさんや?頼られるのが嬉しいのかい?
(な、ナビ、…ごめん。お互いに、共有しているのは分かっているのだけれども…、ちょ、ちょっとだけ、落ち着いて・・)
(「…!す、すみませ…ん」)
ぉぉーぃ…。
そんなに急に落ち込まなくても。
(…まったく〝可愛い〝かよ…)
(…いや、可愛いって、なんだ…、俺?)
いや、待て!この思考は危な…。
(「・・・!!!」)
ぉぉぉぉ…い!ナビさん、落ち着いて!
凄い感情なのか?!
”何かが”流れ込んで…。
〝クラッ〝と来たのか、シュンが、そっと支えてくれていた。
おい、待て…惚れてしまうだろ?!
(…いや、惚れるわけは無いが…)
お…、急に冷静になれたからか。
バランスが取れたのだろうか、落ち着いてきた。
いかんな…、これは、思った以上に相互の〝共有が深い〝らしいな…。
いや、悪くは無いのだけれどもね。
じゃなく、シュンが何かを…。
「シエル?…シエル?大丈夫か?…すまん、歩かせ過ぎたか?少し休むか?そうだよな、リハビリ終わって…、いや、俺、なんか嬉しくってさ…、同年代と歩けるのとか…、いや…、あのだな…!・・・」
(ぉぉぅ…、シュンもなんだ…。ナビのが〝移った〝のかね…。急に、色々と〝かわいい〝事になってるじゃないの)
とりあえず…、シュンの言葉に甘えよう。
近くの椅子に座らせて貰って、オーナーさんから、飲み物と店内カタログを貰うのだった。
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それにしても、シュンはあれか…。
ちょっと、色々と大変なのかね。
(いや、大変なはずか)
ムシュタル大将…、それに親ギルド派の、筆頭の息子か。
まだ、13歳そこらだ。
それは、そうなるはずだ…。
夢の世界だったら、俺は…。
(「し、シエル様…?す、すみませんでした」)
ちょっと、しょんぼりとした声がする、ナビからも返事があった。
(ははは…、大丈夫、大丈夫)
『シュン、ありがとうな。僕は…、いや、俺は嬉しいよ。ちょっと、よろけちゃっただけさ。それに、言わなくても、傍に居てくれるのだろう?優しい感じが、シュンからはするんだ。本当にありがとうな。ちょっとだけ、休ませてくれないかな』
〝鳩の豆鉄砲〝では無いが、急に驚いたような表情になり、そして、呆気に取られてるシュンを横目に見る。
(鳩の豆鉄砲か…、そう言えば懐かしいな…〝可愛いは正義〝っていうのも、あったな。…ぁ)
ぁ…。
”遅かった…”
(「…!!!」)
ナビさんからの、感情攻撃パート②が自分に、襲い掛かって来るのだった…。
これは、仕方ない…、完全に俺が、墓穴を掘ったのだ…。
甘んじて受け止めようじゃ…〝ぁ…ダメだ…〝
そう思いながら、少しだけ視界が、ホワイトアウトみたいになるのだった…。
彼女は恥ずかしがり屋なのだろうか
いや、恥ずかしがり屋なのだろう
けれども、彼女は感情が共有しているから
上辺じゃない、本当の気持ちが伝わってくるから
だからより一層、感情が揺れ動くのだろう
だって、彼女は彼の事を・・・




