黒い渦⑳
『ハク──! そのまま突っ切って!』
「ああ──! わかったぞ!!」
案の定……いや、予想通りでこちらも敵だと思ったのだろうイーリス艦隊や飛行船から大規模魔法が放たれてくる。
けれども、ナビと自分の白銀の障壁で防いでは──。
『これなら……!』
白銀の力を漂わせてヒノモトの女王のシンボルを空中へと展開させるとイーリス艦隊からの攻撃の手が緩んでいき、最期は近付いた頃には攻撃の手は全て深海の龍へと注がれて、こちらへの攻撃は収まっていた。
「いったい何者じゃ──!!」
ハクがイーリスの女王のシンボルはためく飛行船へと並ぶと飛行船からは……イーリスの女王だろう人が最前列へと出てきてはこちらへと視線を投げ掛けて来ていた。
「じょ、女王……! お下がりくださいませ!」
背後には執事だろう人達が彼女を下げようとしているが──。
「笑わせるではない! わらわはこのイーリスの女王エリザベスよ!」
パッと右手に持っていた扇子を開いては口許に寄せて高らかに彼女は宣言していた。
『あ、あの……』
「むっ……龍に人が乗っておるぞ?」
「なかなか、癖がありそうな人だな」
「ほう、白銀の龍か──龍は話せるのかえ?」
ジロリとこちらを値踏みするような視線を投げ掛けて来るなかハクからエリザベスさんの飛行船へと自分は飛び降りると、周囲の彼女を守っていた騎士がこちらへと剣を一斉に向けてくる。
「控えよ!! 先に無礼を働いたのはわらわ達ぞ!」
「「はっ──!!」」
彼女の一声で周囲の騎士が武器を納める。
「わらわは彼らと話し合う故に──その他の者は引き続き深海の龍を足止めせよ!」
「「はっ──!!」」
そして、彼女の指揮で一目散に騎士達は散っていく。
「ふむ、髪色は全く合わないが……どこかお主には見覚えがあるような気がするな……?」
エリザベスさんはそう言いつつ、自分の目元や鼻立を見てくる。
『ご存知かは分かりませんが──私は父トーリと母カーラの息子になりますシエルと言います』
「──!! なんと、なんと! あの方らのご子息なのかえ! わらわはどこか……確かに見覚えがあるはずじゃ……そうか、そうか似ておるの」
『……あ、あの』
そして、ジロジロと見ていたエリザベスさんは今度は自分の正体が分かったら嬉しそうに微笑んでは頭を撫でてくるのだった。
「トーリとカーラ達のお陰で、この魔法の構成が完成したのじゃ。 わらわはその息子に感謝をするべきじゃ。 そうか、2人の事は残念じゃった……」
『は、はい──』
頭を更に優しく撫でられつつ、エリザベスさんは悲しい声をあげて──。
「シエルよ、我はいつまで見守っていればいい?」
そこへハクがやっと話を一旦終わらせる機会をくれる声を掛けてきてくれたのだった。




