黒い渦⑲
「なんですか、あれは……」
マリが驚いた台詞を吐いてるが確かに壮観だった。
いや、危険な状況なのは分かっているがイーリスの飛行船や艦隊が勢揃いしては目の前に居るのが黒い力に融合された深海の龍なのだろう。
それへと向かって大規模魔法をバンバンと放っているのだった。
「シエル様……あれは──」
ナビから言われて、良く目を凝らしてみるとナビの言いたいことが伝わる。
『多重魔法か……父さんと母さんが聞きに行ったやつか!』
父トーリと母カーラがそれを学ぶために知識を共有しては完成させる為に行ったとされる技術が確立されたのか、大規模魔法の連続詠唱やそれへの魔力の負担を減らすのも一役勝っているらしく、今も深海の龍へと攻撃を放っていた。
だが──足止めは出来ているようだが。
決定打には欠けているようなのは遠目からでも分かった。
『ハク──あの旗の飛行船の下へ迎える?』
「誰に言っている? 大丈夫だ、任せろ……!」
『ナビ……念のため障壁を──』
「分かっています……!」
「私たちは振り落とされないようにしたら大丈夫?」
『うん、お願いするよ──レイ』
コクリと頷いてはレイ達は皆、ハクへと改めてしがみつく。
『ナビ──障壁を……!』
「はい……!」
「では、行くぞ!」
そして、一気にハクは飛行船──イーリスの女王の旗がはためく飛行船へと飛ばすのだった。




