黒い渦⑰
「僕は──」
「────!」
漆黒の龍が口を開いてはまごついて居るとハクが無言の圧力を漆黒の龍へと与えていた。
「ありがとう……そして、ごめんなさい──」
漆黒の龍は周囲へと視線を向けるが周りは今も悲壮感に包まれており、エルもまだレイに抱き締められては顔を埋めていた。
『仕方ない……とは言えないけれども──』
決して、漆黒の龍は悪いわけではない。
どちらかというと彼はロイアの守護を担っていたのだ、各所で遂に限界を迎えて黒い力に汚染されてしまっていた状況なのだ。
「ううん、分かってる。僕が、僕が出来る限り復興の手助けをすることを誓うよ」
そう言って漆黒の龍はこちらへと頭を下げてくる。
「その言葉──本当ですか……?」
漆黒の龍の発言を聞いて、レイの胸から顔を起こしたエルが漆黒の龍へと視線を向ける。
「約束する──ただ……」
ただ、シエル達にも恩があるからもう少しして動けるようになったら彼の助けをしたい──彼にはその時が来るはずだから。
そう、漆黒の龍がエルへと言うと静かにエルが頷いては、レイから身体を話して立ち上がっては改めて静かに礼をしてこちらへと感謝の言葉を述べてくるのだった。
「シエルよ──時間が……」
『分かってる……ナビ?』
「えぇ──次は……距離的にもイーリスが良いかと」
ハクが話を促して来て、ナビへと確認すると次の目的地が決まる。
ここからイーリスまではハクのスピードだと近いだろう。
自分たちはエルへと改めて挨拶をしてはハクへと飛び乗り、イーリスへと向かうのだった。
「このご恩は決して──決して忘れません……!」
そうエルがこちらへと手を振りながら、周囲の回復した人達も一様にこちらへと手を振る者や敬礼する者が印象に強く残ったのだった。




