黒い渦⑯
『ふぅ……』
「あ、あの……」
ん──?
首を傾げるとマリがこちら側に来ては補足してくれる。
「えっと、シエルくん彼女は……」
彼女はエル。
このロイアの第2皇帝の娘で継承者でもあること。
「シエル様──やはり、ここに居るので全員です」
そこへナビが周囲を当たってくれていたが無事に帰ってきていた。
『そっか──』
ナビの全員というのは確認出来る生存者だ。
ロイアは多くの犠牲を払っては何とかここまで逃げ仰せて、後は命を削りながらも倒れては何とか生き残った人数は今目の前に居る少数との事実だった。
「私はこれから……どうしたら──」
当のエルもそれを聞かされては一層顔を暗くしてしまう。
「……」
そんなエルにレイは何も言わずに抱き締めていた。
微かに鼻をすする音が聞こえてくるが、誰もそこには触れないようにしていた。
「シエルよ──」
そこへ、フラフラと飛びながらもハクの後ろに漆黒の龍の姿が見えていた。
「おい、案内したぞ。後はお主から言うのだ」
そうして、こちらへと着地した漆黒の龍を同じく着地したハクが翼で押し出しているのだった。




