黒い渦⑧
「反応が無い──」
ロイアへと辿り着いて、隣のレイがポツリと呟く。
反応がないのは精霊だろう。
人の気配もシャドウの気配も無い。
チェニスとロイアの境には闇が覆われていて、そこに突っ込んでからはずっと闇が世界を覆っていた。
「少しだけ──力を増しますね」
「すまない、ナビよ」
「いいえ──ハク、頑張ってください」
「あぁ──任されよ!」
ナビが定期的にハクの白銀の力に黄金の力を混ぜてはハクの結界を強固にして闇の世界を飛んでいた。
『ハク──! 少し右へ!』
「あぁ──!!」
自分はハクの位置を算出しながら、ロイアの都と言われてる場所へと進路を案内していた。
「間に合わなかったのか?」
「そんなこと言わない──!」
シュンの言葉にリンが叱咤をしていた。
だが、確かに──。
この闇しか無い惨状を見てしまっていたら、そう思うのも仕方ないだろう。
マリとバルは辛そうな顔を見せないように前を向いていた。
『そろそろ──いや、ナビ!! 結界を強く!!』
「──!!」
ナビも同じ感覚だったのだろう。
自分が指示を出すより早く結界を強固にしていた。
その瞬間──。
ギギギギギギ──!!
結界に黒い力がぶち当たっては後方へと黒い力が流れていき、地上へと大穴を空けていた。
『ハク──! 気をつけて!!』
「なんだ、あれは……」
「同化していますね──」
目の前には漆黒の龍──いや、闇の力を纏った漆黒の龍が居た。
「シエル、前──!!」
レイが指差した方には光の結界が展開されていた。
今も大量の形の無いシャドウが攻撃を仕掛けていては結界を打ち破ろうとしていた。
「まだ、あそこから人の気配が! 精霊の気配も有ります!!」
『ハク──!』
「分かっている! 我に任せろ!! あそこまで送り届けてやる……!」
ヒュォォォ──ン!!
ハクが横にズレて漆黒の龍からの攻撃を避ける。
「くっ! しっかり捕まれ──!!」
ハクが警告するのと同時に白銀の力で皆をハクへとしっかりと固定させる。
「サポートします──!!」
ヒュイィィ──ン!
迫り来る漆黒の攻撃をナビの展開したバリアが吸収しては壊れる。
「助かる──!!」
ハクは一気に加速して漆黒の龍……そして、その奥の光の結界へと向かって漆黒の龍の攻撃を掻い潜って向かうのだった。




