黒い渦⑦
「情報感謝する──!!」
目の前ではチェニスの将官がこちらへと頭を下げていた。
こちらのノーラさんから持たされた書状を渡したら話がすぐに通ったのは助かった。
今はハクからの話や自分達の話、そしてやはりチェニスの黒い渦を解放した事で通信機能が改善──いや、ヒノモトと回線が確保された事で諸外国の状況が見えて来ていた。
ふふふ──。
これが噂のシエル──。
へぇ──。
こんにちは──。
黒い渦が浄化されて澄みきった影響だろうか?
目の前には精霊が現れては自分達に挨拶やハクへと話しかけたり、暴風の龍を心配して寄り添っているものが溢れて来ていた。
「これは──」
『浄化された影響だと思います』
「むっ──」
そう言っていると将官の守護精霊だろう精霊も現れては将官に寄り添っていた。
────暴風の龍が目を覚ましました!
そして、休息を取らせて貰っていたところ慌てて駆け込んで来た兵士が将官へと報告しに来ていた。
「シエル殿──」
『はい、行きましょう』
将官に促されながらも皆で暴風の龍の下へと向かう。
「私は──」
「むっ、目覚めたか?」
「白銀の……」
「いや、我は今はハクと名乗っている」
「──名だと?」
「そうだ、ほら来たぞ。お前を解放したシエルだ」
「むっ──!! その力は……」
「流石に分かるか」
「女神様なのか……?」
「違う、シエルはシエルだ。数奇な運命から我も救われたのだ」
「……そこら辺は後で聞きたいが……チェニスはどうなった?」
「見ての通りだ」
『あ、あの……』
「──感謝する」
『い、いえ──』
暴風の龍は何とか気力を振り絞ってかその重たいであろう首をこちらへと向けて下げてきていた。
「そうか──世界は……申し訳ない私はまだ動けなさそうだ」
「仕方ない、我はシエルが最小限に留めてくれたお陰で動けてるだけだ」
「シエルよ──」
『は、はい』
「我も後程、合流するのを約束しよう──世界を……女神を救ってはくれないか?」
『分かっています』
「あぁ……よかっ──」
そのまま暴風の龍は意識を落としたようだった。
「シエル様──」
ナビの言いたいことは伝わって来ていた。
時間がないと──。
『皆も大丈夫?』
「あぁ、しっかり休ませて貰った」
「大丈夫だ」
バルとシュンが応えてくれてる中で、他の皆も頷きながらも応えてくれていた。
『ハク──』
「あぁ、分かっている。行けるぞ──」
「シエル殿──! こちらを……!」
そのままハクの背に乗って飛び立とうとしていた所で将官が慌てて駆けつけては僕たちに食料を渡してくれる。
「口に合うかは分からないが、これしか無くてすまない」
『──! いえ、有り難いです!!』
ずっと、ご飯は確かに食べられていなかった。
感謝を述べてはハクの背に飛び乗る。
そのまま、ハクは飛び立つ。
「このままロイアへと向かうぞ──!」
「そうですね──距離的にも……それに浄化されたエリア的にもそれが良いと思います」
ナビが頷きながらハクへと応える。
僕たちは食事の必要性がある。
ハクとナビの会話を聞きつつ、手早く食事を……いや、固形食を飲み込んでいく。
「そろそろ─距離的に飛ばすぞ……!」
『頼む──!』
自分の声にハクは頷きつつ、大きく翼を羽ばたかせては推進力をあげては速度を上げていく。
そして、ロイアへと僕たちは向かうのだった。




