黒い渦④
「シエルくん──!!」
「シエル──!」
マリと……珍しいというよりは初めてなのだろうか? レイが声をあげてはハクに乗りながらこちらへと向かって来ていた。
周囲に存在していたシャドウは今は白銀の渦の力で逆にどんどんと浄化されていっていた。
今は浄化された力が周囲に満ち溢れていて、それが守りにもなっていて白銀の渦からは精霊が生み出されているのが視認出来ていた。
「あっ──シエル……」
そして、レイが何かに気付いたように手を差し向けた方向を見てみると白銀の渦から生み出される名もなき精霊達が集まっては一体化していき──。
「また会いましたね──」
以前にシャドウ化した際の大型シャドウの元になった女性方の精霊が姿を現したのだった。
「むっ──ティターニアか」
「主様──」
ハクの呼び掛けにハッとしたような表情になり、頭を垂れてはティターニアと呼ばれた女性型の精霊はどこか感動したような表情になっているのを横顔から覗かせていた。
『ハク──?』
「あぁ、シエルか──この者はティターニア。名は我がお前達の文化から則り名付けた。妖精を束ねるものだ」
「改めて、私は──ティターニア。あの時は私もギリギリで挨拶も出来なく……そして私の願いを叶えて下さり──ありがとうございます」
ティターニアは自分とハクの背に乗っていた皆へも視線を向けては頭を下げていた。
『でも、あなたは……』
そう、あの時散ったはずだ。
「精霊は──姿や形はエネルギーなので……私の魂が有る限りはこの通りです」
その魂も私を望んだり、覚えていたりしてくれていて世界が祝福してくれているのならば……こうやって顕現する機会があるということだった。
「ティターニアよ、汝に任せたい事がある」
「──! は、はい!!」
「我はこのまま──シエルと世界の黒い渦の浄化に向かう」
「──やはり、世界は……」
「あの方……女神様も限界を迎えているということだろう」
「それでは──!」
「大丈夫だ。シエル達が──居る」
そして、ハクの視線が自分とナビへと向けられ──ティターニアもそれに合わせて自分達を見てくる。
「分かりました。ハク様──それで私は……」
「我はこのまま世界の黒い渦を浄化する……その後の世界の調律を任せたい」
「──! 私が、ですか……?」
「あぁ、我は……いや、我らは我らでやらねば──成さねば成らぬ事がある。頼めるか?」
「わ、分かりました──ハク様のいう通り、ティターニア……身命を賭しても果たします」
「うむ──」
満足そうに頷いてはハクはティターニアを見やり、そしてこちらへと視線を戻してくる。
「シエル……このまま行こうと思うが問題はあるか?」
『皆は──』
「平気だぜ」
「あぁ、もう腹は決まってる」
シュンとバルの声が聞こえつつ、他の皆も同意の声が返ってくる。
『ハク──お願い出来るかな?』
「あぁ、任されよ! 皆、掴まるが良い──一番近い距離……チェニスへ向かうぞ!」
チェニス──暴風の龍が守護する国だ。
そして、ハクが一鳴きして羽ばたきして一気に前進を始める。
後ろを振り向けばティターニアと、生まれてくる精霊達が自分たちへと手を振っては送り出してくれていた。
そして、僕たちはチェニスへと一気に飛ばすのだった。




