『巡り会うもの達⑦』
この学院は広い
学院が広いのか
国が狭いのか
それをまだ、彼は知らない
「おい…、シエル、大丈夫か?」
『あ、あぁ…。大丈夫…、これでも、体力は…、リハビリの時も含めて、身体作りはしてきたから…』
(…ヤバい)
これは予想外だ。
魔力車は優秀だった。
やはり、人類の叡知なのだろう。
ちょっとでも、良い顔をしようと、シュンから〝歩きつつ、話ながら行こう〝という誘いに、二つ返事で、OKを出してしまったが…。
これが…、まさか…。
途中までの魔力車は良かったが、…最後まで、お世話になれば良かった。
(「・・・・」)
おや?身体が軽くなったような…?
(ナビ…?)
(「僭越ながら、細胞を少々、活性化致しました。…多分、この程度だと、筋肉痛などの、後からの支障はギリギリ抑えられるはず…、です」)
(ナビ、ありがとう)
これは、水系統の魔法かな。
(ありがたい…、よし、これなら、もう少し行けそうだな)
「シエル、大丈夫か?少し、ペース落とすか?商業区エリアは…、ほら、見えてきた。あれだ!」
シュンが手を指す方を見ると、…おぉ、学生寮エリアとはまた違う、高層の建物が、幾つも並ぶエリアが見えて来た。
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『ちょっと、これは…、なかなか…』
そう、それは”横に制限があるなら、縦に伸ばせば良い”理論なのだろうか。
実際に、目の当たりにすると〝中々〝の高層の建物が、溢れていた。
「分かる分かる。これを〝摩天楼〝って言うんだろうな」
シュンがそう言いながら〝初めてだと迷うから、俺のお勧めの…、いや、正確には父様だけれども、贔屓にしている店を案内するよ〝と言い、案内をしてくれた。
ーーー
(・・・高い)
シュンが先に行ってしまったが、その行った先は〝旧世界〝だと、軽く8階位の高さの場所だった。
(えっと…、ここに手を置いて魔力を…)
建物の中にはエレベーターはあるようだけれども、使う人は少ないらしい。
多くの人が外に設置されている、機械に手を触れ操作し、魔力層にて、行き先までの魔力ルートを確定させた後に、飛んでいるみたいだった。
(シュンが言うには、ルートを確定は視認で描いて、後は魔力を流したら、そのルートをなぞるように身体を…)
『おっ…』
”フワリ”と、浮遊感を感じ、そして、視認するルートに合わせて身体が飛んでいく。
(「長距離で無ければ、魔法紋でのサポートもあるので、不慣れな人でも、大丈夫との事です。…風の魔法ですね、慣れればシエル様なら〝補助〝が無くても、同様の事は、可能だと思います。重ねて、長距離での移動も、可能だと思います」)
(本当に…?)
そう、ナビの言葉を聞きながら、シュンの立っている場所に、近づいて行く。
「上手くやれたじゃないか!ちょっと、心配はしてたけれども。初めての人は、怖がって落下しそうになったりするから。一応、補助機能も付いてるから、落下死とかは無いけれども、ゆっくりと下に落ちていくから…、少し情けない姿になるんだよな…」
どこか、シュンが遠くを眺めるようにしながら、最後は呟きに近い位で、話しかけてきたが…。
(これは…、反応を返しづらいな…)
ちょっと、多分、その情けない事になってしまったのが、誰かが分かってしまったようで、何とも言えない空気になったが…。
「いや!何でもない!大丈夫だ!とりあえず、シエル、行こうぜ!」
1人で、何かを納得したのだろう、シュンは明るく努めて、店内まで歩を進めるのだった。
”旧世界”とは違い
”新世界”の常識は変化している
今まで便利だったものが、魔法により向上
不慣れな人の為には魔法紋、回路を刻んだ機械により
補助し、生活のレベルを向上させるのを実現していた
そして、需要に合わせて変化を求められているのだろう




