黒い渦③
「我はここまでだ──すまない!」
ハクの苦しい声が一層、黒い渦の存在の強さを感じさせていた。
黒い渦は近くに寄ると、想像以上に大きく──何より歪だった。
そして──。
何か精神的な汚染を感じる……。
「シエル様──!!」
『あぁ、ここからはナビと共に行く──! 皆はハクと周囲のシャドウをお願い!』
「任された──!」
そして、ナビと自分がハクから飛び降りて巨大な黒い渦と向き合うなかでハクと皆は撤退していく。
だが、そんなハク達を追従するように黒い渦から尚も生み出されているシャドウが追いかけて行っていた。
「シエル様──来ます!!」
ナビがそう言いつつ精霊剣を取り出しては黄金の混じった白銀の力で迫ってくるシャドウ達を一掃していく。
『何か嫌な気配がする──! ナビ! 早めにカタをつけよう!』
今、ナビと自分だけになり黒い渦から漏れ出てくる瘴気に含まれる意思みたいなものを更に鋭敏に感じ始めていた。
殺せ──。
壊せ──。
恨ましい──。
辛い──。
苦しい──。
怨嗟の声というのだろうか。
黒い渦からは瘴気と共にそれらが溢れ出していた。
「これはあの時の──」
『あぁ……、あの時のやつと同じだ』
ナビと共に目の前に迫り来るシャドウを一刀両断しつつ、黒い渦へと飛翔しては迫っていく。
『ナビ──!!』
「はい──!」
『全力で最初から行く──!!』
「分かりました──!」
ナビと手を握り合わせては精霊剣を掲げる。
そして、黄金色の混じった白銀の力を収束しては一気に解き放って黒い渦へと精霊剣から迸る白銀の力を叩きつける。
ギュイイイイィィィ──ン!!
っと、力と力が合わさった箇所で力の拮抗が起きる。
そして、力が溢れるなかで──。
黒い渦からの意志がこちらへと溢れて来る。
──タ……ス……ケ……テ──
『ナビ──!』
「何かが見えました──!!」
力の拮抗した先──黒い渦の先……の光景が一瞬だけでも見えた気がした。
何かが助けを求めてるようなものを感じつつも、それをこの黒い瘴気が今も尚、呑み込もうとしている光景が見えた気がした。
『ナビ──!』
「分かっています──!!」
もう少しだ──。
拮抗している箇所から黒い瘴気がどんどん浄化されて行ってるのが見えていた。
そして、ナビと握り合う手にお互いにもっと力を込めて精霊剣へと白銀の力を更に注ぎ込むと──一気に拮抗していた力がこちらに軍配が上がり白銀の力が黒い渦まで到達すると、白銀の力は黒い渦全体を包み込んで──最後には黄金色の色が輝き、浄化された白銀の渦がそこに存在していたのだった。




