『巡り会うもの達⑥』
いつだって始まりは”ワクワク”するもの
まずは、寝具かな。
うん、生活する上で…、というよりは、今日を過ごす為にも必要だろう。
後は、そこから紐付けして、買い足して行けば良いか。
”さて…”と、考えていると、シュンが話しかけて来た。
ーーー
「シエル、大丈夫か?」
(ん?)
ちょっと〝どの辺り〝の大丈夫なのか分からなく、少しだけ〝?〝を浮かべてしまった形で、頭をかしげてしまった。
「あっ、いや、どうするんだ?これから、…その、商業区エリアとか分かるか?」
(あぁ…、なるほど)
自分の惨状を見て、心配、…いや、もしかしたら、最後の〝分かるか?〝の部分で、・・シュンは優しいやつだな。
(「いえ、シエル様ほどでは…」)
いや、今、一瞬だけ、ナビの声が聴こえた気がしたが、気のせいだろう。
(うん、気のせいだ)
どれだけベタ惚れなのだ…、悪い気はしないが。
(とりあえず、そうだな…)
『寝具から、まずは揃えようと、…後は、その近辺のお店から、色々と、家具も取り揃えられたらと思っているよ。ただ先程、両親の資産を譲り受けたのだけれども…、どうやら、家具類もあるみたいだから。とりあえずは、寝具を今日は、と思っているよ』
〝商業区エリアは多分、分かるかも…〝と、少し不安を見せてしまったせいか、もしくは・・。
どうやら、シュンも交流を深めたいということで、案内するのを提案してきたので、自分は、それに乗っかる事にした。
(まぁ、多分…。ナビに聞けば分かるのだろうけれども、こういうのは必要だろう)
(「やっぱり…、シエル様は、優し…」)
ナビの声を”右から左へ”聞き流しつつ、手早く外に出る用意を…と思った所で、ふと気付く。
ーーー
『あっ…、間取り…というか、分からないや…』
ふと、零してしまった言葉に呼応するように、脳内に部屋の間取りだろう図形が浮かび上がる。
ふと、視線を感じて、そちらに目を向けると、こちらへと微笑んでいるマザーが居た。
「すみません。失礼ながら部屋の間取りを、お送り致しました。この寮の事なら、改めて、何なりと相談してください。サポート致しますので…」
〝ありがとうございます〝と、伝えて視線を外そうとしたのだが。
マザーは”まだ”こちらを見ているようだった…?
(いや、これは〝自分じゃない〝な…)
マザーは、そのまま〝じっ〝と視線を、こちらの奥を見通すように、見た後に”深く深くお辞儀”をしたのだった。
(…これは、ナビに向けてなのだろうか?)
…まったく、ナビの事に関しては、未だに自分もすべては分かっていない。
けれども、1つだけ確かなのは、ナビは常に〝自分を想ってくれている〝事だけは、確かだろう。
(その重さは、未だに分からないけれども…)
(「・・・・」)
なんだか、不意に熱い視線?
いや、視えないものなのに、そんな視線を感じた、俺が居た。
ーーー
「シエルー?おーい…、あれ…?シエル…?」
ふと、気付いたら、シュンがこちらを心配しながら、声を掛けて来ていた。
(…ちょっと、ここら辺の反応の遅さは改善しないとな)
”ちょっと”が、何に対してなのかは、自分にも分からないが、とりあえず、シュンの方に向かうのだった。
『すみませ…いや、すまない。待たせた』
シュンは〝ん〝と頷いてから、”じゃ行こっか”と進み始め、自分も、それに合わせて、商業区エリアへと向かうのだった。
マザーとナビの関係性は、今は謎に包まれている
だが、分かる事もある”疑似精霊のマザーが頭を下げた”ナビと言う存在は
マザーよりも上の存在なのだろう”それを意味するところ”は、まだ先の話になるのだろう
そして、今は新しいページ、商業区エリアへと、舞台が切り替わっていくのだった




