白銀の龍④
「ギャァァァ──!!!!」
手応えはあった──。
確かに先ほどのハンネスとシロでは傷付けられなかった鱗さえ突き破って一撃を見舞うことには成功していた──が。
「浅い──!!」
『ナビ──回避!』
白銀の龍へは多少のダメージを与えたに過ぎないようだった。
即座に白銀の龍はこちらへと視点を変えては力の奔流をこちらへと吐き出して来ていた。
「これでは──!」
『まだ……高められ──』
いや、時間が足りない。
ナビとは先ほどよりも力を蓄えているのも──少しずつだが白銀の龍と力が拮抗してきているようにも感じていた。
だが──。
足りない……!!
その時だった。
「シエル──離れろ!!」
イアンさんの通信が聞こえてきた。
ナビも聞こえたのだろう──咄嗟に白銀の龍との距離を置くと、白銀の龍へと目掛けて巨大魔法が放たれていた。
「どうだ! ワシとガイウス──有力なギルドと軍のメンバーの混合魔法は!!」
ドルマンさんの声が通信から聞こえて来る。
「いや、ドルマン──次だ!!」
ガイウスさんの声が即座に聞こえて来る。
その理由は自分の目の前で証明されていた。
白銀の龍は黒い力と──今にも侵食されそうな白銀の力を束ねた障壁を身体全体へと展開していて防いだようだった。
「なんじゃっと……あれを防ぐか──いや、白銀の龍じゃったな……」
「まだ魔力のあるものは行動を開始するのだ!!」
「俺らはハンネス達の援護に向かうぞ……!!」
「私たちも──リンクスへ続け!!」
ドルマンさんとガイウスさん──後半はイアンさんとムシュタルさんの声が入ってきていた。
「愚かな──生命よ……」
『何を言って……』
「シエル様──白銀の龍の意識はまだ……保っ」
助けて──あげて──くださ……
助けて……
助けて……
タスケテ──
『これは……』
白銀の龍と視線を合わせてる最中にまた違った声が……いや、これは──。
「あの時の巨大シャドウの際の精霊……」
そうだ、ナビの推測が正しい。
あの時の精霊の気配を感じる。
そして、同じくかの精霊に呼び寄せられた精霊達が自分達へと──白銀の力へと纏っては混ざっていく。
「その力は──」
白銀の龍の理性のある目が一瞬覗く。
その目に捉えてる自分達の白銀の力の色は──白銀なのは変わらないが少しだけ黄金色に輝いていた。
「これは──」
これで──解放を……お願い致します──。
ナビが言葉を紡ぐ前にかの精霊の意識が自分達と1つになるのが感じる。
『ナビ──これは……』
「はい──あの精霊の力が私たちに──それだけじゃないような気もします」
黒い力に侵食されては打ち払った力、そして自分達の色々と混ざりあった力──全てが1つになったような気がした。
「我は……そうか……長くはもう持たな──いや、その力は……」
「シエル様──! 白銀の龍の意識が!!」
「シエル──というのか、人間よ我の願いを──その力で我を刺し貫いてくれ……」
『それでは──あなたが!』
「あなたか──我をそう呼ぶか……大丈夫だ、そんなやわではない……だが──もう身体の自由は奪われ始めている」
「そのようですね──」
ナビが冷静に判断して見ているが、確かにそうだ──。
今も展開した障壁の力を取り込んでは攻撃の体勢へ移行しようとしている。
「我を解放してくれ──お前なら払えるはずだ……あの方の気配を感じるお前なら」
『あの方──?』
「我は暫し──解放の時を待つ……信じているぞ、シエルよ……」
「シエル様──! 来ます……!!」
白銀の龍の意識が消失したように感じた瞬間──目の前の白銀の龍は先ほどと打って変わって、こちらを完全に敵と認識したのか襲い掛かって来るのだった。




