白銀の龍①
「ギヤァァァ──!!」
空間が震えるような鳴き声が一帯を占めていた。
「ッ──!! なにこれ?!」
「ブリッケン! 我の後ろに下がれ!」
「シエル様──!」
『防御壁を──!!』
ナビと自分──そしてシリウスが展開した防御壁は白銀の龍の力の籠った鳴き声のもと一気に崩れ去っていた。
「し、シエル──もしかして……あれが……」
『ヘルメス……そうだよ、あれが白銀の龍……』
けれども……。
その姿は白銀と呼ぶには幾分疑問を禁じ得ない姿になっていた。
所々白銀の鱗が見えるのだが──ほとんど黒い力に侵食されているような状態だった。
「あれが……白銀の鱗なのですか──? けれども、文献とはまるで……」
「マリ様……あれは確かに白銀の龍ですが──違います。私の記憶している姿とは大きく乖離しております」
マリの言葉にシロが直ぐに反応を返していた。
そうだ──。
小さい頃の記憶が蘇る。
あの頃に見た白銀の龍はまだ白銀に輝いていたと思う。
今の姿とは雲泥の差だ。
「ギヤァァァ──!!」
『ナビ──! 合わせて!!』
「はい──!」
再度、ナビと息を合わせて障壁を展開させる──がヒビが直ぐに入る。
「シエル──!」
『ヘルメス……!』
そこへ、ヘルメスの力も加わり再度白銀の龍の咆哮を凌ぐ。
キリが無い……。
そう思えたのも束の間で、白銀の龍から何かが──いや黒い何かが溢れ落ちては地上にてシャドウへと姿を変えていた。
「なっ──」
「ウソだろ──」
シュンとバルがその光景に唖然としている中。
「ブリッケンよ──ノーラ様をお願い出来るか?」
「はっ? 誰に聞いている。当たり前だ──お前何考えてやがる?」
ブリッケンへとノーラさんを預ける姿のハンネスがそこに居た。
「父様──?」
「良く聞きなさいバル。強く、強く意思を持って生きるんだ──では無いと私のようになってしまうからな」
「何を言って──」
「ハンネス……あなた──勝手は許しま……」
そこへノーラさんが意識を取り戻したのか、ハンネスを呼び止めていた。
「女王様──大変ご迷惑をお掛け致しました。その清算をここでさせて頂きたく……」
「ダメです……ダメです──、誰かハンネスを……」
「諦めなノーラ、ハンネスは覚悟を決めてるんだ」
「────」
そこへ、ノーラを支えていたブリッケンが声を掛けるとノーラさんは歯噛みして言葉を失ってしまっていた。
「私も行きます──」
「シロ──?」
「マリ様? マリ様も強く生きてください」
「あっ……」
そして、マリから離れてシロはハンネスの横へと並び立つ。
「良いのか?」
「はい──それに中央エリアは私の管轄なので。お忘れですか? 私はここのマザーでもあるんですよ?」
「それは失礼を申しました──」
慇懃に礼をしてハンネスはシロと目を合わせていた。
そこには覚悟を決めた2人が並んでいたのだった。




