『巡り会うもの達⑤』
魂の有り処は、誰にも分からない
けれども、双方に認識があり
そして、歓喜を知れるなら
それは、既に”確立”されているのではないのだろうか
”では、僕はすまないが、これで出てしまうよ”
そう言い残し、立ち去る前に、ヒューズさんが立ち止まり。
”そうだ”と、言い。
「”マザー”居るかい?」と、空中に声を掛けていた。
”・・?”と、頭にはてなマークを浮かべていると、僅かに魔力の層に揺らぎを感じて、そこに人型の”何かが”現れた。
ーーー
「はい、ヒューズさん。私はこのエリア内では、いつでも、居ますよ。そして、シエルさん、シュンさん、これから、よろしくお願い致しますね」
そう言いながら、お辞儀をする”マザー”に合わせて、自分も、シュンも、頭を下げていた。
『えっと・・、あなたは・・』
「はい。私は、ここ学生寮エリアの管理を担当している”魔力と人工AI”を組み合わせ、召喚された”疑似”精霊の”マザー”と言います」
(”また”だ)
(”精霊”とは、何なんだ)
そこはまだ、調べていない部分だった。
ーーー
「シエル・・?”ピン”と、来てなさそうに見えるけれども、大丈夫か?俺も”まだ”自分の守護精霊を持っていないから、分からない事も多いけれど、この”マザー”は、人工AIが守護精霊と契約、・・いや同化しているような”疑似”的な、精霊みたいな存在なんだ」
”疑似”が付くのは、契約者が”魂を有する”かで、変わる為らしいが。
人工AIに限っては、近年”クオリアの獲得によっては、魂の概念は変わるのでは?”っと、囁かれてもいるらしい。
このマザーも果たして”疑似”なのか、判断は難しいとも云われてるとの事だった。
・・・ただ、俺は話を聞きながら、気が気ではなかった。
そんな存在を、今まさに”身近”に感じているのだから。
そして、先ほどの、移行の処理の際にアナウンスは”何と言っていた?”
”契約守護精霊”と言っていなかったか?
ちょっと判定が、曖昧らしく情報を、漁る。
ーーー
【契約】守護精霊=魂のある精霊、及び、魂のある契約者と結ぶ
守護精霊=魂のある精霊、及び、魂のある契約者との間で、双方の中で魂が無い場合に発生する
疑似精霊=魔力と人工AIの結晶、それらは、魂が無くとも実在する例がある
けれども、この括りでさえも、だいぶ曖昧らしい。
呼び方も基本は”守護精霊”で通しているのが、一般的みたいだ。
それに、読み漁っていると、魂の”有無”についての判定が、非常に曖昧らしい。
精霊と云われてる存在すら、ファンタジーなのだ、それはそうなるだろう。
ーーー
(けれども、”確信”はある。・・ナビには魂が”有る”)
(「ニコッ」)
どこか、ナビがほほ笑んだような気配を、感じた。
それにしても、だ。
そこも重要だが、もう一点だ。
『すまない、シュン。・・その、なんだ・・”まだ”と言っていたが、守護精霊は、皆が持つものなのか?』
そういうと、シュンは一瞬、目を見開き、驚いた様子を見せたが、すぐに表情を戻して、説明をしてくれた。
魔力を有する者は、その魔力の量と、回路の適性の属性や、強度により変わるが、皆が、それらに準じた、守護精霊を伴っているという事。
そして、それは、これからの入る中学の頃に合わせて行い。
魂・魔力・回路が安定する年齢に合わせて、契約を結ぶ術式を執り行うという事だった。
曰く、それが入学式と並行して行われる、と説明してくれた。
(なるほど。・・だからナビは、入学式に間に合うようにと言ったのか)
どこか、ソワソワしているナビの気配を感じながら、シュンにお礼を告げる。
「では、私は行くよ。シエルくん、それにシュンくん、すまないね。マザー、彼らへの、寮の案内と、シエルくんの、部屋の間取り等の、サポートをお願いするよ」
「はい、ヒューズさん。お任せください」
マザーの返事を聞きつつ、ヒューズさんは手早く、シュンの方にも挨拶して、部屋から立ち去っていったのだった。
さて・・、と。
とりあえず、目先のことを、やらないとかね。
俺はとりあえず、行動を開始することにした。
精霊、それは不思議な存在
この世界に魔力をもたらされた際に散見され始めたとも云われている
そして、クオリアとは”感覚質”
主観的に感じて蓄積される意識や経験は
果たして”魂”と言われるカタチを創るのだろうか
それは、誰にも分からない
けれども、それを感じることは出来るのだろう
そして、シエルはまずは、部屋を整える為にも奔走を開始する




