異変⑨
「シエルぅぅ──!!」
『そこッ──!』
相手の白拍子だった男は既に言葉が支離滅裂になっていた。
ギリギリ分かるのが自分の名前を呼ぶ時くらいだろう。
けれども、最初は精錬さもあった攻撃も段々と本能のみで動くようになってきたのか、直線的な単調な攻撃になってきていた。
──それでも、動き自体は人知を超えた力。
とても早かったが……、それを言うならば自分も──ナビも似たような者だろう。
単調な攻撃を弾き返してはがら空きになった懐に潜り込んでは一閃──白拍子だった男を斬り捨てていた。
「シ──エ……ル」
『ただ、眠ってください──』
身体は残らなかった──精霊に近くなっていたのだろうか?
粒子のように消えていっていた。
『ヘルメス──!!』
「シエル──! 僕は良いから……皆で先へ行って──!!」
『なっ──』
「だいじょ──ぶ……シリウス達と一緒に僕も追い掛けるから……ね?」
『────』
「ありがとう──。多分、この為に僕は付いてきたから──! シエルの活路は僕が切り開くよ! ほらっ! 行って──!!」
『ありがとう──ヘルメス!』
自分の言葉に最大限の笑顔なのだろう、安心させるような表情をヘルメスは浮かべて──一気に白拍子と同時に何体かのシャドウを巻き込むように大技を放っていた。
「シエル様──!!」
「シエル──」
そして、リンを抱えてナビとレイが──そして、バルとシュンも合流した。
「危なかった──ヘルメスの一撃に助けられた」
「──だな」
シュンとバルが頷いていたが、確かに一気に展開したヘルメスの魔法の一撃は見事に分断と助けを兼ねた一撃になっていた。
手短に皆にヘルメスの想いを伝えると一様に顔を皆が引き締めていた。
「シエル──私は──」
「大丈夫……」
「えぇ、私もサポートしますから」
リンが少しだけ弱音を吐きそうになった所でレイとナビが支え合うようにリンを補助していた。
『行こう──! 目的地はもう目の前だから』
「うん」
「はい!」
それぞれ、皆の返事を聞きつつ目の前を見やると最初は遠くに位置していたはずの浮遊エリアが既に目の前に迫っていた。
皆で頷いて一気に再度駆け出す──。
浮遊エリアへ行くには外部からの侵入は出来ないのは以前──ナビと調べていたら分かっていた。
まずは議場から例の皇室へ──独立した浮遊エリアへ移動するための場所へと辿り着かないといけない。
僕たちは気を更に引き締めて向かうのだった。




