異変⑧
「ッ──!!」
「リンさん──!」
「させない──!」
普段はマリがサポートしているであろうリンの動きは目に見えて鈍っていた。
彼女は基本的には自分の風の属性を用いて高速に動いて敵を翻弄してはそこを突くスタイルで、危険な際はマリがカバーに走っていたのだが──、現状はナビとレイの2人が間でフォローしている形になっていた。
そのまま3人は共に動くようになっていっていた。
シュンとバルの方も群がるシャドウを光と闇の魔法を通して時には弾き、時には重力を生み出しては地に縛り付けた所をシュンがトドメを刺していた。
対して自分は──。
「シエル──!! ごめん!」
『大丈夫。ヘルメス──横から来る!』
ヘルメスと共にシャドウの力を取り込んだ、今すぐにでも暴走しそうな白拍子達を相手に取っていた。
彼らの動きは既に人の限界を超えた動きになっており、こちらへ向かって無軌道に──だが非常に早く鋭く攻撃を繰り広げて来ていた。
「──ッ! 僕と同じ……、いや、それ以上──!!」
『ヘルメス──!!』
「だいじょ……ぶっ──!!」
接近されて凶刃の攻撃を受け止めては弾き返したヘルメスがそこには居た。
「ッ──!! これ程とは……!」
対して、自分へと斬りかかって来ていた白拍子の男は衝撃を受けたような顔でこちらを見てきていた。
『これ程? ──常に監視していたのは理由が?』
「──ッ!! これ程の力……! 今の世には不要だ! ここで摘みきる!」
自分の言葉に反応をした白拍子は驚きを1つ、すぐに何かを思い直したのか覚悟を決めた表情で自分を見やって来ていた。
「私にもっと……ち、チカラを、ヲヲオヲォォオ──!!」
「シエル──!! 気をつけて! そいつ暴走している!!」
『ヘルメス──! 君は君の相手に集中を……!!』
何とか相手の白拍子の攻撃を防いでいたヘルメスから声を掛けられたが、押されてるようにもヘルメスに自然と叱咤激励をしていた。
それを聞いてはヘルメスは頷いて目の前の相手に集中しだしていた。
「──お前をケスぅぅぅぅ……!!」
『これは……もう戻れないな……』
目の前の白拍子だった男は既に人の姿……いや、存在が変容していた。
元々の人、そして、精霊を変容させた黒い力、それらが合わさって……イビツな──既にシャドウと成り果てていた。
『今──楽にするよ』
それが自分に出来ることだろう。
聖霊剣をソッと構えては相対するのだった。




