異変⑦
「ねぇ! さっきのファナって誰なの──?」
『僕にも分からない──!』
移動の最中──ヘルメスを先頭に突き進むなかでリンが自分に問い掛けて来ていたが、先ほどの白装束の人が言っていた、ファナという存在には心当たりが無かった。
「俺は知っている──」
そんな中、後ろでシュンと平行して飛びながら共に移動していたバルが口を開く。
ヘルメスを先陣に時たま、僕たちを目掛けて襲ってくるシャドウを蹴散らしつつ、バルが語るには──。
バルの父、ハンネスが収監される歳に立ち会った白装束の頭目の男の名がファナと呼ばれていたらしい。
「ねぇ! そいつが今回のこれを起こしてるってこと?!」
「──分かりません」
「私も分からない……」
リンの疑問の声にナビとレイが返すが、自分達の中でその答えを出せるものは居ないだろう。
「皆──! 悪いけれども、そろそろ厳しいかも……!!」
そんな中、先陣を切っていたヘルメスが声をあげて目の前を見やればシャドウ達の中に異質だと分かる──白装束達も居た。
「バル──!! 行くぞ──! 今は進むしかない!」
「あぁ……、そうだよな。すまないシュン──大丈夫だ」
ヘルメスに並び立って武器を構える僕たちにならって、シュンとバルも武器を構える。
中央エリア──皇室……そしてハンネスが収監されている浮遊エリアはもう既に目の前に迫っていた。
「ここからは先は通さないぞ──!」
「ねぇ──! おかしいとは思わないの?!」
「シャドウの力を使いこなすんだ! 勝機は我らにある!!」
「リン──無駄。彼らには届いてない」
「皆! 来るよ──! 僕もフォローするけれども気をつけて!!」
白装束らが武器を構えてはシャドウの力を取り込むように一気にどす黒い魔力がはね上がるのが目の前で分かる。
そして、同じように彼らに届かない声をあげたリンをレイが押さえてはヘルメスがやはり先陣を切って進んでくれていた。
「シエル──! 僕が頑張るから──シエルは力を温存して!! きっと、シエルの力は先で必要になるから……」
『ありがとう、ヘルメス──! 分かった、先を頼む』
「うん! 任せて──!!」
最後に自分に声を掛けてくれてヘルメスは突き進んで行く。
目の前にはシャドウと白装束らが立ち向かって来ていたが僕たちは先に進むためにも彼らと剣を交えるのだった。




