異変⑤
「おい──なんだよ、これは……」
「ひどい──」
シュンとリンの進入してからの一言目の反応がそれだった。
「シエル──どうなっているの?」
隣のレイも疑問……いや、怯えながらも声を掛けられる。
『余り想像したくはないけれども……』
目の前の光景は悲惨の一言だった。
空間には例の黒い魔力が飛び交っており、それが周囲の生物などを侵食しては喰らっていた。
自分たち目掛けても襲い掛かって来たが、白銀の力に守られた自分たちへは敵わないのか──まだ小さい黒い魔力は弾けるように消えていった。
「シエル様──」
「シエル──!」
ナビとヘルメスの掛け声は同時だった。
それに振り向くと2人は言いたいことが同じだったのだろう。
ヘルメスが先を譲ってくれたようでナビが口を開く。
「まだ可能性はあるかと──向こう……皇室の位置する浮遊するエリアにはシロガネ──シロの気配を感じます」
ナビの言葉に中央エリアのマザー……全てを統率する彼女の気配を思い出しては微かに届いてくるのが伝わってきていた。
まだ、生きている──!
それだけで十分だった。
ナビとヘルメスの予想が大きいのが自分の反応を見て受け取ったのか皆の士気が上がったのを感じた。
けれども、これで目指す場所は分かった。
あの浮遊する──皇室の住まうエリア……そして、バルの父親が禁固されている場所。
『皆──! このまま皇室のエリアに向かおうと思う!!』
自分の掛け声に皆頷きつつ応えてくれて──今の動きを送らせることなく、皆で駆け出していく。
それと合わせたかのように目の前にシャドウが現れる。
それを斬り捨てつつも、僕たちは着実に中央エリアの中央──皇室の住まうエリアと向かっていったのだった。




