『巡り会うもの達④』
空っぽだけれども、空っぽじゃない
この世界は既に”旧世界”では無いのだから
いらっしゃい”New World”へ
『えっと・・、え・・?』
「・・・・」
Oh・・、シュンも言葉を失っている。
それはそうだ、部屋は2人分に分かれてはいるが、片方は装飾も整っており、きっと、シュンの私物なのだろう、調度品も備え付けてあった。
色々と置かれてもいたが、自分の方に限っていえば、ベッドの骨組みがあること以外、その他は”ほぼ何もない”状態だったのだ。
”カァーカァー・・”
旧世界だと、こういう時、カラスが鳴くのだっけ・・?
(いや、この世界に、カラスは居るのかな?)
(今のシュンみたいに、頭じゃない・・、全身が真っ白なカラスも居るのだろうか?)
(「カラスは、まだ世界には居ると思いますが、・・真っ白なのが居るのかは不明ですね・・」)
ほら、ナビさんも、ちょっと困惑してるじゃないか。
(これは、どうしてくれようか?)
とりあえず、ちょっと後ろに着いて来てくれていた、ヒューズさんを振り返って、見てみる事にする。
”・・・ジーー・・”
「あはは・・、大丈夫。ちょっと驚かせようと思ったんだよ」
ヒューズさんは苦笑しながら”これ”をと云うと、1つはちょっとした袋と、そして”手を合わせて”と云われて、ヒューズさんの手と合わせる事にする。
手を合わせると、視界に”ビジョン”が浮かんで来た。
ーーー
(これは、ナビと情報を共有していたり、魔力ネットワークにて、情報を閲覧している時に近いな・・)
【息子シエル:トーリ、カーラの、資産の受け渡しを、移行致します。了承を、お願い致します】
ヒューズさんを見ると、頷いてきたのを確認して、了承をする。
【了承を、確認致しました】
【移行します。当該、資産の預かり所は、番号””””””になります】
【引き出しには、現地にて。もしくは、当事者:現在はシエル様に移行、シエル様の回路を通じての転送袋、またはボックス、または術式により、転送を可能と致します】
【回路に関しては、当事者:シエル様のみ、現在は承認。引き出しの転送量、大きさは、シエル様の魔力量、及び、回路の適性値に、準ずるものとします】
【移行中、魔力回路の解析に、支障をきたし中・・、エラー・・、エ・・”契約”守護精霊”ナビ”の、サポートの介入を確認、移行の継続が、可能になりました】
【移行完了。”特殊ケースにて、締結”該当”契約”守護精霊”ナビ”及び、当事者:シエル様のみにて、利用が可能となります】
【”特殊ケース”にて、置場は現在の”””””より、最下層の”イレギュラーエリア”に申請、・・受諾、承認の確認をしました】
【”特殊ケース”の、案内になります。当事者:シエル、”契約”守護精霊”ナビ”のみにて利用可能。すべての制限は、解除されております】
【移行は”安全”に完了。お疲れ様でした。これからも、ご利用、お待ちしております】
ーーー
(・・・は?)
”契約守護精霊”?
ナビが?
(えっと、待て・・)
転送袋・・?この渡された、ちょっと洒落た袋だろうか?
「シエル?」
シュンも、フリーズから解除されたのか、こちらを見ている。
”あれ・・、おかしいな。こんなに掛かる事は、ないけれども・・”と、ヒューズさんは目の前で、呟いていた。
『すみません、大丈夫です。少し、分からない単語、”転送袋”等の説明があったので・・、調べていました』
なんとなくだが、何が起きたか全てを”まだ”語ってはいけない気がして、曖昧に濁しながら、自分は2人に、大丈夫だったと伝えるに留めた。
「良かった。ちょっと、焦ってしまったよ。今、シエルくんに渡したのはトーリ、カーラの資産なんだ。僕が預かっていてね。いつか、シエルくんが目覚めたらと、大切に持っていたんだ。僕からも、少なからず支援金は入れてあるから、問題はないはずだよ」
”その袋は、転送袋と云われているもので、出し入れが出来るんだ。でも、口の大きさに制限があるから、それに準じての、取り出せる物質の大きさになっちゃうけれども・・、もし、シエルくんでも、自分で欲しいものが出来たら、見繕ってみるといいよ。結構、そういうオシャレも、トレンドになっているんだ”
そう、ヒューズさんが話していると、隣でシュンが、これが俺の転送袋だよ、と見せてくれた。
赤と黒をベースに、金の刺繡が入った、力強そうな、デザインの見た目をした転送袋だった。
『色々と、ありがとうございます』
”転送術式は大丈夫だよね?”っと、ヒューズさんの言葉に頷く。
そう、ある程度の魔術に関しては、ナビと共に学んでいた。
特に弊害が、回路を通す中で起こることもなく、大丈夫なのは理解していた。
金銭のやり取りも、分かっている。
通貨の価値に関しては”世界で共通”しているらしい。
先程のように、手を合わせるか、または、回路を繋げる事で、売買の処理が出来る。
数字の桁が分かれば、良いだけなのだが、それでも、未だにヒノモトでは”旧世界”の読み上げ方、”万・千・百・十・・そして円”で、お互いに認識している節がある。
これも、ナビと思ったのは、名残なのだろうということで、認識は一致していた。
(さて・・、そう思うと、自分の資産だけれども・・、えっと・・)
1・・10・・10.000・・・10.000・・・1.000.000・・・100.000.000・・・
(ん・・?)
(単位が”億”だと・・?)
2人合わせて、と云っていたが・・。
いや、ヒューズさんの支援金も含まれているのか。
(「その金額は現在、平均年齢が下がっておりますが”普通”に生活する上では、問題がない金額だと思います」)
(・・・え?)
と、思いヒューズさんを見ると”ウィンク”を返してきた。
ヒューズさんは、もしかして女神・・。
いや、ただの中年男性なのだ。
そう、思考したら、一気に冷静になる自分が居た。
『ヒューズさん・・、宜しいのでしょうか?』
改めて問いかけると、ヒューズさんは満足そうに微笑み、頷きながら”シエルくんにはその権利があるんだよ”と、答えてくれた。
その他にも雑貨類、または、その他もありそうだが・・。
視覚化して、内容は見えるのだけれども、まずは、ヒューズさんに俺はお礼を述べるのだった。
遺されたものは大きく
そして、それは今後のシエルの助けにもなり
縁は何処までも、助けを紡いで行くのだろう




