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『リアル②』
まだ、夢の中かね?
夢は目覚めるものかい?
それとも、また〝落ちるのかい?〝
思考の海から浮上するように、目を開ける。
見えるのは〝変わることのない〝オフィスの風景だ。
終わらない仕事、山積みの書類の城。
『いつまで、こんな円舞曲を演じないといけないんだ?』
〝誰もいない〝オフィスにて男は愚痴っては、書類を流し目で見る。
(変わらないな)
(そう、何も変わらない)
この視野に納まる景色は何も変わらない。
そして時計の針が深夜の〝1:11〝を指し示しているのだけは、男に現実を実感させるのだった。
『腹減ったな……』
(いや、食べても〝はたして〝胃にうまく消化されるかね)
男は自分の体の弱さを愚痴っては仕事を再開する為に思考のギアを上げていく。
(うん、回っているな)
(思考、良好)
(視界も、クリアだな)
(唯一の障害物は、この埋もれた書類の城か)
(はぁ……)
溜息を吐きつつ、男は重い腰をあげ、既に弱り切った心を奮い立たせるのだった。
男の見える世界は常に絶望に囚われていている