チョコレート④
学園の講義も今にして思うと中々多種多様で面白かったと思う。
いや、内容自体はナビと共にサルベージした知識や取り込んだ情報から全て分かっていたとしても、そこに教える側の見解等が混ざればまた違った視点が見受けられて新たな発見もあったりして新鮮だったのだ。
そして、今も講義を受けていたのだが──。
お昼を今日は2人で過ごそうとリンから連絡が入る。
それを察してか皆、特にお昼の集まりとかは触れずに昼食の時間になるのだった。
「ねぇ、シエル──えっと、ね」
2人で日当たりの良い、ちょっと学園でもお洒落でお高めのテラス席で食事をしてる最中──覚悟を決めたようにリンが自分へと話し掛けるが……みるみる内に顔が赤くなっていく。
「あれ、あれ、えっ──私、えっと、あれ、ちゃんと練習だと──」
そのまま、慌てたようにブンブンと手と頭を振ってはリンは慌てる素振りが止まりそうに無くなっていく。
『えっ、えっと──ほ、ほら……リン?』
「あ、ありがと──ありがとう……」
目の前でブンブンと振っていた手をそっと握って上げると先ほどの慌てぶりが嘘のように大人しくなっていくが──リン自体は顔を真っ赤にしながらうつ向いてしまった。
「私……普段は元気キャラだったり──あれなんだけれど……あはは──どうして、こういう時はこうなっちゃうかな……」
小さな消え入りそうな声でリンが呟くように話してくる。
『でも、僕はそんなリンも素敵だと思うし……良いと思うよ?』
そんな言葉ばっかり──シエルくんはいつもズルいよ……。
っと、自分の言葉にポツポツとリンが言葉を返してくる。
「えっと、ね……シエルくんを思って私──私──頑張って作ったの……!」
そして、落ち着いたリンは顔を真っ赤にさせながらもそっと空間収納からチョコレートを取り出して自分に渡してくる。
綺麗にラッピングされたそれは──外装からもこだわっているのが伝わって来ていた。
「ねぇ──チョコレートの渡す……意味、知ってるよね……?」
そして、不安そうに俯いていた顔をそっと上げて自分を見上げてくるリンに頷く。
「私、ね──ちゃんとシエルくんから言葉欲しくて……安心したいの、ダメかな? 私、ズルい子かな?」
そして、また少しだけ不安そうな顔になりつつも──でも顔を伏せることはなく、こちらをじっと見てくるリンが居た。
『リン──僕は……リンの事が──』
「────!」
『大事に思っているし、ちゃんと1人の女性として好きだよ』
「────!!」
自分の言葉を一語一句聞き漏らさないようにと真剣に見ていたリンだったのだが──自分の言葉を聞くと嬉しさの余り卒倒しそうになってしまっていた。
『り、リン──?!』
「──ぐすっ、わ、わだし……ずっと不安で──今凄く嬉しくて──幸せで……」
椅子から立ち上がってリンの傍に行って支えるとリンは緊張が崩壊したのと同時に涙がボロボロと溢れ落ちて来ていた。
『ご、ごめん──不安にさせていて……』
「うん……うん、私……も、不安だったの──不安だったのぉ……」
私……も、か。
リン以外にも不安にさせてる人か──。
泣き出してしまったリンを安心させつつ、きっと──もう一人はと思いながらも今はリンを安心させるのに集中する。
暫くするとリンは落ち着いて来て、先ほどとは打って変わって照れながらも自分を真っ直ぐ見てきて微笑んで来ていた。
その笑顔は満開の花のようでとても綺麗だった。
「ごめんね、ダメなところ見せちゃったね──」
『全然、そんなこと無いよ。これからも沢山、色んなリンを見ていきたいよ』
もう、シエルくんは──。
と、満更でもない笑顔でリンは嬉しそうに笑う。
そのまま、お昼を楽しんではリンからしっかりとチョコレートを貰い──お昼の時は過ぎて行くのだった。
そして、午後の講義に差し掛かったタイミングでこっそりとマリから夕方時間を作れないかと連絡が来るのだった。




