チョコレート③
「シ、シエル──」
ん──?
卒業前の日の朝だった。
この日はナビが何故か一足先に寮を出ていて、レイと二人っきりだった。
そんな時に真剣な目でレイに声を掛けられるのだった。
「シ、シエル──あの、ね。これ──私の気持ち」
『あ、ありがとう──』
そっと、後ろ手に隠されていたチョコレートを手渡される。
レイと二人っきりの部屋が室温が上がったように感じた。
「私、シエルの事──好き。大好き。だから──」
ギュッとそのまま抱き締められる。
レイの少しは成長した身体でも未だに小さくて──年齢からして……いや、これは以前口にしたらまだ成長期なのだと怒られたのだった。
けれども、そんなレイがギュッと自分を抱き締めて来る。
『ん、分かってる。僕もレイの事が──好きだよ』
少しだけ震えてるのが分かってしまう。
きっと緊張していたのだろう。
そっと抱き締め返してあげると安心したのか身体全体を預けるように腕の中に収まってくる。
「ん──、子供はね……えっと──」
『ん、ん? う、うん』
レイはその後子供の人数とか、こういう風になりたいの夢を聞かせてくれた。
少しだけドキドキとやっぱり括った腹を更に覚悟を固めていく自分の心情を感じながらも、レイの話しに相槌を打つのだった。
「ん──。私の番はおしまい。行こう、シエル? 皆、待ってる」
『えっ──と、分かった──行こう、か』
最後に回しきれない腕をギュッと力を込めて自分を抱き締めてレイが自分から離れる。
普段は少しだけクールな表情の乏しい感じのある彼女だが今だけは顔が赤く火照っていたのだった。
そして、レイの言葉の意味は──そういうことなのだろう。
今日は長くなりそうだと心の中で改めて気を引き締めて、レイと一緒に学園へと登校するのだった。




