チョコレート②
「はっ? シエル知らないのか?」
「いや、シエルだからな──」
シュンとバルが驚いたような目でこちらを見てきていた。
先ほどのリンとマリ、レイとナビの一幕を話したらの反応だった。
いや、本当に知らなくて──。
っと、言ったらシュンがはぁ……とため息1つ教えてくれた。
自分達もそろそろ高等課程も終わりで卒業が近付いていること。
そして、卒業の時期に合わせて離れ離れになってしまうかもしれない思い人にチョコレートを渡して想いを告白する習慣があるということ。
「元は──旧世界のバレンタインっていうのが習わしだったかな?」
「あぁ、そうだな」
シュンとバルは説明してくれながら感慨深く頷いていた。
「それで──だ。 シエル?」
『──』
「はぁ、腹は決まらないのか?」
『いや、分かっては居るんだけれども──』
「別に今のご時世、多重婚も認められてるんだぞ?」
「いや、シュン──これは世間体というか心持ちの問題だろう」
全く──シエルは時たま……こう弱いよな。
と、頭を抱えてシュンは項垂れている。
俺にもチョコレート来ないかなぁ──と続けざまに言ってる位だ。
そんなシュンを横目にバルは自分の肩を叩いて、男なら覚悟を決めるんだな。
気持ちはもう気付いてるし、流石に分かってるんだろ? と問い掛けて来るのだった。
いや、まぁ──。
イベントの事もうっすらと知っていたと言うよりはナビの感情の起伏とか以前調べているのを見てしまって気付いていた。
こんな自分に良いのだろうか? と今さながら考えてしまったというだけなのだが、そんな事が今もどうやらウジウジとなってしまってる原因らしかった。
けれども、卒業の時期まで後少しに差し掛かっていた。
皆の進路はリンクスへとそのまま働くことは決まっていた。
ただ、1つの節目が終わるのを知らせるのには充分なイベントでそして、皆の気持ちが揺れ動くのも当たり前な時期なのだった。
自分も世間体では良い年齢になってきている。
彼女達もだ。
そろそろ、ちゃんと考えないといけないよな──と未だにチョコ……チョコと項垂れているシュンをなだめているバルの2人を見つつ思うのだった。




