巨大シャドウ⑨
「シエル──すまなかった」
「た、助かりました──」
「ありがとうございます──」
「──っす」
イアン含めて、元部下の3人組は満身創痍だ。
マリとリンも魔力切れを起こしていて、直ぐには立ち上がれないだろう。
本当は魔力を分け与えたかったが、ここらに居た精霊だった──シャドウは全て討伐してしまっていて。
ここら一帯が魔力切れを起こしている状態だった。
イアン達──ボン達含めて追い詰められた要因はこの魔力の不足も背景にあったのかも知れなかった。
「ボンさま──? 大丈夫です……か……?」
「馬鹿者!! この──バカ者……私など放って置けと何度も……」
「なに言ってるんですか……私がそんなことするはず──」
「お前は──私が主人だからというが……主人だからと命を投げ出すなど……」
「ボンさま──私はあなたが主人だから守ったというのもありますが──私は……1人の女性としてあなたをお慕いしています」
「なっ──ん……」
「ここまで言わないと分かりません……か?」
「──一先ず、分かった。まずは、もう無理をするな──頼む」
「はい。分かりました──少し休ませてもら……い──……」
「バカ者が──私もお前の事を……」
意識を失ったセーレさんをボンは何とも言えない顔で、それでも今まで自分が見た中で一番優しい顔でセーレさんを撫でていたのだった。
フィンとシンもお互いに憎まれ口を叩く余裕は無いのか、お互いに背を預けては体力の回復に努めていた。
「シエル──? 大丈夫か?」
「マリとリンの方はしっかり横にさせてきたぞ!」
バルとシュンはまだ何とか気力が残っていた。
バルは最後まで皆を回復させていた自分の心配をしつつも周囲の警戒に当たってくれていた。
シュンの方も皆を安全な場所と安静にするのに一役買ってくれていた。
『ありがとう──多分、もう少ししたら応援が来ると──』
「いや、大丈夫だシエル。 後は任せてくれ」
「あぁ、バルと俺が居たら──大丈夫にしてみせる」
大丈夫だ──と言いきれないシュンの様子にどこか安心感を覚えつつ、素直だなと思う。
そんなシュンを見てかバルは──大丈夫だから安心しろ。
と、声を掛けて来る。
『なら、少し任せたよ──』
意識──だけは薄く広く周囲に張りつつも少しだけ意識を沈ませる。
ナビの方が、その気配を感じてか逆に意識を表層へと浮上していくのを感じたのに安心感を覚えつつ意識が沈んでいくのだった。




