地下研究施設跡⑥
「ナビ様──!」
「ヘルメス? そっちはどうだった?」
無事に外に出て、ヘルメスやシリウス──そしてボンやセーレさんが居る場所へと戻って来られていた。
ヘルメス及びシリウスの2人は疑問符を頭に浮かべているだけだった。
とりあえず、そんな私たちの様子を見つつ──そっと、セーレさんが私に近付いてきては今回の作戦の経緯や結果を聞いてくるのだった。
「なんだと?! 黒い存在が?」
「あぁ、本当だ」
「俺も見たぞ、あれはどう対処したらいいんだ?」
ボンにはフィンとシンがどこか得意顔と不安顔が混じった顔で中での出来事を聞かせていた。
「私には分からなかったや」
「我も何も感じられなかった」
ヘルメスとシリウスの2人とも分からなかったらしい。
(あの感覚が凄く共有できるのはやはりシエル様だけですか──)
どこか、その事実に嬉しくなりそうな気持ちを抑えつつ──現状の必要な事。
研究施設での各種資料や中でのギィーの派閥の存在やらの情報をセーレさんと共有する。
そして、セーレさんは適宜まとめてはすぐにリッチさんへと情報を流していった。
もう夕方だと──外の景色で分かる。
ふと時間を確認するのに魔力ネットワークへと意識を向けるとそろそろ決勝への始まりの案内やシエル様の事が意識に入ってくる。
シエル様を感じたり、想うだけで心? 心というのでしょうか。
身体の内側が暖かくなっていく。
「よし! 撤収しよう!」
「えぇ──必要な事は全て整いました。 今頃はリッチ様の派閥からギィーの派閥へと情報戦が繰り広げられているでしょう。 後はコロシアムの勝利と──改めてギィーの背後を洗い出せば……」
セーレさんの言葉を聞きながら、私はふとした疑問を抱く。
こちらに──賭博エリアに来た際は感じられた白拍子達の気配が消えている? 感じられないことに気付いたのだった。
何故──?
その疑問に答えを導き出すことは出来ないまま、私たちは一旦シエル様とも合流するためにもリッチさんの下へと移動を始めるのだった。




