地下研究施設跡④
「これで粗方──終わりか?」
「いや、シン──奥の方にもまだ何か──」
シンさんと、フィンさんの話し声が聞こえてくる。
私の方はレイちゃんとは探索を振り分けたエリアでの研究資料等の漁りは終わっていると思えた。
「おい──こっちにまだ扉が……」
って、シンさんからの声で皆で奥の方に集まると厳重なセキュリティの掛かった扉があった。
(これは何なのでしょう──)
いえ、既存のシステムと……何かこれは……そう中央の結界と似たようなモノと合わせたような──。
「これは──」
マリさんも気付いたらしい。
その目は少しだけ訝しげになっている。
「ナビ──? ナビならこれを開けられる?」
「そうですね──レイちゃん……」
そっと、セキュリティを取り纏めている端末が生きているのでそのパネルに触れてみると認証を求められるように触れた手から魔力が探知されていくのを感じる。
これに合わせれば──。
複雑なものだけれども、私にとっては慣れ親しんだもの。
向こうのセキュリティシステムの要求に応えるように魔力を這わせていくと──。
ピー──。
っと、短い電子音の後にプシュっと扉から音がする。
そして、目の前の厳重な扉が解除されると同時に左右に開かれて行くとぼんやりと灯りが照らされながら中の状況が見えてきた。
*
「げっ──」
「父さん──」
シュンさんと、バルさんの苦い顔と苦しそうな顔がどっちにも浮かんでいた。
厳重な扉の先の空間には厳重に黒い存在の何かのコアらしきものを封じている大きな試験管がそこにあった。
試験管の中の黒い存在はコアを中心に蠢いてはその存在は未確定なのか一定を保つ事はなく、常に変容しているのだけは理解させられた。
「これは──フィン? どうする?」
「いや、ここは僕たちじゃない。 ナビさ……」
フィンさんの声が聞こえて来るが私の意識はそこには向いていなかった。
「皆様──! 迎撃の用意を……! この気配は白拍子が来ます──!!」
最近、常に感じていたあの気配が幾つかが物凄いスピードで迷うことなく私たちへと目掛けて駆けてくる気配が一気に濃密に感じていたのだった。
私の警告に皆、疑問を浮かべることもなく──それぞれが迎撃の用意を始める。
そして、彼ら白拍子が目の前に現れるのも同じタイミングだった。




