コロシアム42
控え室に試合後戻るのだが──ここでイアンさんとは別室になった。
会場を戻る際も相手選手側の入場口から戻ることになる。
──次の相手はイアンさんだからだ。
それを乗り越えたら決勝戦になる。
「お前がシエルだな?」
控え室に戻る最中に次の闘いに挑む選手とすれ違う。
そして掛けられた声に目を向けると黒尽くめの男──リキアが居た。
『はい、そうですが──』
「ふっ──待っていろ」
そう言葉を手短に残してリキアは会場へと姿を消していくのだった。
*
雇われ……?
いや、あの雰囲気は──。
先程のすれ違った際のリキアの雰囲気が脳内にもう一度再生される。
あの目、あの雰囲気──。
リキアの裏の顔、暗殺者としての顔が表層に出ていたように思える。
気を付けないとな……。
そんなことを考えていると、会場近くに止まったままだったからか試合開始の声が聞こえてくる。
「あぁぁっと! ──この試合も一瞬だ!!」
「「おおおお!!!!」」
会場の観客の盛り上がる声が聞こえてくる。
少し戻って会場内を見渡すと、倒れているリキアの対戦相手と会場の貴賓席から威厳たっぷりに手を振り撒いてるギィーが居た。
召し抱えてる戦力は己の力──。
それを見せつけるアピールでもあるのだろう。
軽く会釈をして戻ってくるリキアと正面からかち合ってしまった。
「見てたのか? 次はお前かイアン、どちらかの番だな──」
それだけを言い残してリキアは音もなく立ち去っていく。
その音の無い動きは暗殺者の歩行術のそれだった。
会場の熱はまだ冷めることはなく続いている。
自分は次の試合──イアンさんとの闘いのアナウンスがなるまでそこに立ち止まっているのだった。




