『巡り会うもの達①』
やっぱり、お前と出会うのは運命だったんだよ
俺はお前と出会えて良かったと、心から思っているよ
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《side:シュン》
俺は、父様みたいな、立派な人間になるんだ。
父様は、苦境の道に、立たされている。
けれども父様は、その先の希望を見据えている。
自分でも分かる事と、分からない事もある。
何故、人はまた争うのだろうか。
歴史では、魔力を持たない者との淘汰の歴史を聞かされた。
心が”ただただ苦しかった”のを覚えている。
そして、今は魔力持ちのみになった世界でも、また、争いは起きている。
【人類を守る】
それは、お互いに共通している事なのに、何故、人は争うのだろうか。
モンスターという異形の怪物が、跋扈する世界だというのに。
昔、小さい頃に父様に尋ねた事がある。
何故、人は「争うのだろうか」と。
父様は言った、それは、人間が遺伝子的にも「争うシステムが、組み込まれてしまっているから」と。
人は生きていく中で争って、そして、勝ち得て来た。
生きるとは、曰く、競争社会なのだということだ。
それは、逃れのない事実であり、だからこそ〝旧世界〝では、それらの抑制の効果の為に、殴り合いの大会、…ボクシング?…プロレス?…格闘技の闘いが、あったらしかった。
しかし、酷い場合は、それでさえ、システム部分を解消できない者は、「DV」〝一番、やってはいけない暴力システム〝だと父様は云っていた、それに走る者も居たようだ。
そして、「DV」について、調べた俺自身も、それはいけないものだと、思い至ったのだった。
だが〝新世界〝と言われる、現代になってさえ、その負の遺産、けれども、人が人として生きていくために、必要な機関でもある〝闘争本能〝を、解消させる為に、このヒノモトには、旧世界にも存在しなかった〝奴隷市場〝〝闇市場〝〝コロシアム〝の存在に関しては、流石の父様でも、苦い顔をするだけに留まり、手を出すことが出来ずにいた。
奴隷市場とはいえ、最初は良かった。
いつからか、魔力の適性の無かった人類は、子を宿すことも出来ずに、衰退していく中、様々な、状況が飛び交い、淘汰される状況で、救護の意味合いを持って、機能していたという。
それが、今や〝闇市場〝という、形も分からない機構と、ベッタリになるや、何処からか、出所の分からない薬品、そして、不正な奴隷、それらが、蔓延る負の場所になっている。
〝コロシアム〝もそうだ。
最初は、魔力の持たざる者たちの、救済措置の為の、今はない〝スポーツ〝というものを通して、持たざる者たちを守る、セーフティネットだった。
それも今や、形を変えて、薬漬けの奴隷も出る、殺伐な、殺しあいの場になっている。
そして〝闇市場〝とも、横が繋がり、莫大な金銭が動いているという。
・・・止めよう。
これ以上は、今、考えても仕方ない。
学校は、もう少し先だが、明日から、新しい住居だ。
こんな、親ギルド派を大っぴらにしている存在は、居ないだろう。
そして、俺は自身でも思うが、だいぶ、その影響もあってか、周囲に嫌われていると思う。
そして、そんな自分だからこそ、学生の生活は、1人で、てっきり堪え忍び、力をつけて、いつかは、父様を支えるのだと思っていた。
それが、数日前に突然、一緒に住む相手が決まったと、だいぶ〝珍しく〝父様が、自分を呼んで話をしてくれた。
相手の子の名前は、シエルというらしい。
学会では、その名前には大きな意味がある。
結界の専門家、そして類いまれな才能を持っていた、トーリとカーラのご子息。
不幸な事故があったが、なんとか生き残り、しかし、昏睡状態で絶望的だった子。
そんな子が、約半年前に目覚めて、そして、明日から一緒に、この俺と過ごすという。
過ごすといっても、数日ではない〝学生生活を共に〝だ。
学生生活か…。
〝バル〝反ギルド派…父様と対局をなす、ハンネス大将の息子。
そして、俺と、犬猿の仲のやつ。
ギルド派と見れば、悪質な手さえも使う。
そして、実際に、その行為で、精神的に壊れた子も見ている。
シエルは…、ギルド派の両親の息子。
俺が守らないとだな。
とりあえず、明日か。
(なんだろうな…緊張するな…)
いつもなら、親ギルド派の筆頭の息子のことなど、関わりを持とうとするものも居ないし、せいぜい遠くから、興味深く見てくる者が、居る位だ。
そんな俺に、一緒に〝過ごしてくれる〝という、不思議なやつ。
(父様…嬉しそうだったな…)
そして、そんな自分も、何処かで、心が暖かくなっているのを感じていた。
とりあえず、明日だ。
今日は早めに休もう。
遅刻とかで、情けない姿を見せる訳にもいかないからな。
それに、俺は親ギルド派、尊敬する父様でもある、ムシュタル大将の息子なのだから。
そして、夜はふけていく。
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《side:シエル》
(「シエル様?寝なくて、大丈夫でしょうか?」)
(大丈夫だよ、折角、外を、見られるようになるんだ)
そして、ここの施設とは次、いつ来れるのかは分からない。
ヒューズさんに案内されて、最初に見て以降から、屋上のテラスのこの場所は、気付かないうちに、俺のお気に入りの場所になっていたらしい。
そんなナビも、強くは言ってこないのを見ると、感傷に浸っているのを感じる。
(ナビ、ありがとう。俺を、ここまで導いてくれて、そして、この光景や世界は、やっぱり美しい)
(「シエル様、私は、私のしたいことをしたまでです。でも、私は願わくば、これからもずっと、シエル様を支えて、生きていきたいと思っています」)
そして、もう少し、もう少しだけと、ナビと会話を楽しんだり、魔力ネットワークを通じて、少しずつ蘇っている、記憶の補完の為に、物事を調べたりしたのだった。
(「シエル様、…私は大丈夫なのですが、…明日は起きれますでしょうか?」)
・・・だ、大丈夫だろう。
そう、心に刻み込みながら。
でも、やはり、不安を抱いた自分は、ナビの言葉を皮切りに、眠るために、屋上のテラスを後にするのだった。
そして、新しい物語が動き出す
運命に誘われてなのか
はたまた、必然なのか
少年たちは巡り合うのだろう
物語のページは、そして捲られていく




