コロシアム40
「じゃあ──行ってくる」
『はい──!』
そろそろだろうとイアンさんが立ち上がって控え室から出て、会場前まで向かっていった。
*
「イアン選手の入場です──!」
「「うぉぉぉ──!!」」
観客の歓声がより一層大きくなったように思える。
対するは──!
相手選手のアナウンスの声がその声にかき消されていく。
「すまないが余り手の内を晒したくないからな──少し本気で行かせて貰う」
イアンさんの声が聞こえた──気がした。
「それでは──開始です!!」
実況の女の子の声と一緒にイアンさんが高速で駆けたように見えた。
見えた──というのは映像がその速さに付いて行けてなかったからだ。
相手選手がカウンター狙いで腰を落として剣を構えているのが見えたが……、イアンさんが通りすぎた後は相手選手はバタッと倒れているのだった。
「「ぉぉぉ……──」」
会場内の戸惑いの声が聞こえてくる。
「──イアン選手の勝利です!」
実況の女の子の声に意識が浮上したのか、そこからは大歓声が生まれるのだった。
*
僕もそろそろ行くか──
立ち上がって控え室を出て会場に向かって行くとイアンさんとすれ違う。
待ってるぞ──。
そう声を掛けられた気がした。
でも、声には出してなくとも口がそのように動いていたのを見逃さなかった。
軽く会釈をしてすれ違って、自分も次の闘いに備えて入り口前に控えるのだった。




