コロシアム39
「流石だな」
『いえ──イアンさん程では……』
「いや、シエルお前は凄い。しっかりとエンターテイメントとしても成立させて闘っている──この歓声がその証拠だ」
未だに歓声は響いていて、後続の試合を遅らせていた。
そうですね──と素直に頷いて、自分とイアンさんは苦笑いするのだった。
*
「お昼はどうなさいますか?」
「いや、俺たちは自分達で用意したのを食べる」
「畏まりました」
あれから、午前の部の最後の試合が終わってお昼の確認をしに来たスタッフさんが居た。
それをやんわりとイアンさんは断っていた。
まぁ、色々と理由はあるが一番はギィーに警戒してだ。
何かしら盛られる可能性の懸念があった為の対応とも言えよう。
「午後だが──」
『……? はい?』
自分達で用意したお昼を食べ終えて、タイミングを見計らったようにイアンさんは話題を出してくる。
とりあえず、話を聞くためにも反応を示す。
「シエルはコロシアムからの出場者だな?」
『そうですね、以前のここで結構名を馳せては居たようですね』
「そっか──それを勝てたら……俺とだな」
『え? えぇ……イアンさんも次を勝てたらになりますが──』
「ははっ! 確かにそうだ。もし当たることになっても俺は手を抜かないからな?」
『えぇ──自分も全力で行きます』
「おう、それで良い」
午後からは2戦ある──それを勝ち抜いたら決勝だが……イアンさんと当たるのか。
イアンさんもそれを知りつつ、改めて気持ちを作るためにも話題を振ったのだろうと想像が付くのだった。
「皆様! お待たせ致しました! 今回皆様の期待が大きいコロシアム……! 午後の部を開始致します!!」
実況の女の子の待ちきれないという声が会場に──控え室まで響いて来る。
そして、僕とイアンさんの午後のコロシアムが始まるのだった。




