コロシアム38
「ではシエル様の入場になります──!」
あぁ……もう様で通すらしいと思う。
実況の女の子は注意されても折れなかったのか、そのスタイルを変えること無く自分を呼んでいた。
「対する相手選手は──」
目の前に軍からの推薦者が出てくる。
「──」
自分の方をジッ──と見てくるがその視線は厳しいものだった。
『えっと──僕に何か?』
「先の闘いと同じく──手合わせにて確認させて貰う!!」
この手合いね──組み合わせに作為的なものを感じた気はしたけれども、どうやら自分の当たる相手はどうやら自分へ不満を抱いてる者が多そうだった。
『分かりました──手加減は無しです』
「当たり前だ──」
スッと相手が剣を構える。
「それでは試合開始です──!」
実況の女の子の声と同じタイミングで一気に加速して背景を置き去りにするように相手の選手が自分へ目掛けて迫ってくる。
「はぁぁぁ──!!」
『はっ──!』
一気に近寄って来て重い一撃を放ってくる相手の斬激をこちらも迎え撃つ。
ガキン──っと一合。
相手と自分の剣はお互いに弾き返される。
『「ッ──!!」』
そのまま速度を殺さないようにして、回転しつつもう一合相手と斬り結ぶ。
「言うだけはある!」
『どう致しまして!』
袈裟斬りには逆袈裟斬りで対応──その逆もまた同じ。
時には受け流しつつ──斬り結んでいく。
「ははは!!」
笑っていた。
ジッ──と見て来ていたのは見定めていたらしい。
「楽しいな! こんなに着いてくるのはなかなか居ない!」
『それは──どうも!』
重さはお互いに心地よく──相手の技量を最大限に活かすようにお互いに斬り結んでいる。
お互いに余裕を出してる訳ではない。
技量の闘いだ。
どちらが相手を読んで、そしてその斬激を活かしては斬り返すか。
時には受け流してリセットしては再度斬り結ぶ。
「ッ──!」
『そこっ!』
だが永遠は無い。
一瞬だけブレた剣筋を突くように鍔競り合いの相手の剣を弾く。
「だが──! これしき!」
『いや──これで!』
弾かれた剣を翻して一気に叩き斬りに来る剣筋を読んでギリギリを避けながら、身体を潜り込ませるようにして近付いて一閃。
「見事──」
そう言って相手選手は前のめりに倒れていく。
「「うぉぉぉぉ──!!」」
会場は大盛り上がりだ。
「この試合は──シエ──勝利で──」
実況の女の子の声も歓声にかき消されている。
「「────!!」」
その歓声に応じるように手を挙げるとより一層声が大きくなる。
軽く頭を下げて自分は控え室に戻るのだった。




