コロシアム33
「──選手の勝利になります!!」
「「「うぉぉぉ────!!」」」
時間の長い試合も、余りにも短い試合も──実況と会場内の客の歓声によって必然とこちらへと伝わってくる。
「さて、次は俺のようだな」
イアンさんがそう言って片手を上げて自分へ挨拶をしてくる。
『お気をつけて──』
上げた手をプラプラさせて応じたイアンさんは控え室を後にする。
「次は本コロシアムの注目株の新組織リンクス代表のイアン選手になります──!」
「「「うぉぉぉ!! ──頑張ってくれえぇぇえ!!」」」
観客の歓声が一際大きくなるのが肌でも伝わってくる。
戦闘具合は気になるところだったが、他の出場者への情報配慮か控え室内には戦闘モニター等は備え付けられて無かったが、自分で調べては中継を見る分は自由みたいだ。
*
「へっ──リンクス? 代表? ギルド? 噂には聞いているが試させて貰おう」
スッと武器を構える相手選手が映っていた。
「こちらこそ──ある程度は威光を示さないといけないからな」
それに応えるようにイアンさんは一本だけ武器を携える。
「なめてるのか? お前は双剣使いだと聞いたが?」
「なら、出させてみろ」
「──面白い」
相手選手はコロシアムの有名選手なのは選手データから分かる。
イアンさんはそんな相手へ、一人振りの剣で対抗するみたいだった。
「うおぉぉお──!!」
相手選手が一気に加速してイアンさんへと詰める。
そして、その一太刀を浴びせようと──してイアンさんがブレた!
「カハッ──!」
そして、振り抜いた相手選手はそのまま沈む。
「ふんっ──もっと鍛練するんだな」
イアンさんはカウンターだったのだろう振り抜いた剣をシュパッと振り下ろして収納していた。
「す、凄すぎます──!!」
「「良くやったぁぁぁ──!!」」
実況の女の子の驚きの声の後に追随するように会場内の声が沸き起こる。
イアンさんはそれに片手を上げて応じつつ控え室へと戻っていく姿で中継シーンが先ほどの見直しに切り替わった。
(凄いな──前に見た時よりも早くなってる……)
イアンさんの動きは洗練されていた。
以前見掛けた時よりも更に──強くしなやかに。
(さて、僕も行かないとかな)
次は僕のグループの番で、自分が一番最初の戦闘だった。
そっと椅子から腰を上げて試合会場へと自分は歩を進めるのだった。




