コロシアム29
「きな臭いとは何がだ──?」
隣の席のイアンさんから声が掛けられる。
きっと、静かにしていたからこそ。
ヘルメスの声が耳に届いたのだろうと静かにしている3人組を見て気付く。
「変な動きを感じるんです──」
その後はイアンさんと僕たちへとヘルメスは違和感の話をする。
その違和感とはエリア内の人数が増えているのは今回の式典もあるから分かるが、自分でも把握仕切れていない白拍子の方達の人数が多いとの事だった。
「マザーが把握していない白拍子……?」
「そんなことはあり得るのマリ?」
「私も全ての中枢の事情は把握はしていないけれども……、マザーでさえ把握仕切れない機密性の高い人となると人数は限られるはずです」
イアンとリンの疑問の声にマリが答えるが、確かにマリのいう通りだ。
隠密として存在する白拍子ではあるが、マザーでさえ分からない人達は居る可能性があるが……どうやらヘルメスの把握した人数はそういう人数を加えたとしても多いらしかった。
「把握していない白拍子か……我も先日、商業区エリアへと行った際は見かけたな──」
「──」
僕たちの話を聞きつつシリウスも新たな情報を提供する、そして先日のイアンさんと二人っきりで話した際の謎の背後の存在へとイアンさんも考えたのか僕へと視線を投げ掛けて来ており、自分はそれを受けて無言で頷くのだった。
「ですが、今はこのまま行くしかないでしょう──そうですよね、シエル様? イアンさん?」
『そうだね』
「あぁ──その通りだ」
ナビの言葉に僕とイアンさんは同意する。
それを見て皆も頷いて意思をより一層固くして賭博エリアへと僕たちの列車は辿り着くのだった。




