コロシアム28
「凄いね! しっかり線路も整備されてる……!」
「そうですね──まさか、ここまで早く……そして綺麗に整理されてるのは驚きですね」
「────」
リンとマリの声が席の向こう側から聞こえてくる。
それを聞きつつ、対面のヘルメスを見てみると賭博エリアに近づくほどに口数は少なくなって行っていた。
「イアン隊長! スッゴいですね! これは!」
「ばか! 今は代表だろ?」
「本当にどうしようも無いね……」
「はぁ……、少しは静かにしていろ」
「「あっ! すみません!!」」
隣の方ではイアンさんと、イアンさんの元ギルドの頃の部下の3人組も居る。
そして、凄いというのは景色もさることながら──この移動の機会に間に合わせてたリンクス専用の魔力列車の事でもある。
ギルドも軍も専用列車は保有しているが、遂にうちのリンクスへも間に合わせて納車されたばかりである。
試験的な運用も兼ねて、今回はお披露目と合わせて乗っての移動だったりする。
「ふっ! 私の所の資金提供の大きさも有るけれどもね!」
「ボン様──確かにそうですけれども、少しは控えないとですよ」
「むっ! まぁ、そうだな……」
3人組の声を聞いてか、ボンとセーレのやり取りも聞こえてくる。
確かにうちのリンクスのバッグにはガイウスさん、ドルマンさんの両ギルドど軍の要人のバックもあるが、ことさら資金源に関してはボンの親御さんのリッチさんの影響は強かった。
「フィン? 用意はしっかり出来てるのか?」
「シンは変なところで真面目だよね、バッチリだよ」
普段はライバル視というよりは、お互いに認めるライバル同士なのだが──フィンとシンの2人もこれからに備えて最後の確認をお互いにしているようだった。
「外……綺麗」
「そうですね、レイちゃん」
ナビはニコニコと緊張感を適度に纏わせながらレイに反応を隣で返している。
『ヘルメス──大丈夫?』
「ん」
「多分だが、我もそうだがエリアの管理情報を見てるのだろう」
『あぁ──』
なるほどね……と二言目は心の中で言う。
自分はヘルメスにとって賭博エリアに向かって近づく事で心理的な負担から口数が少なくなっていたのかと思ったが、どうやらシリウスの指摘の方が正しかったらしい。
「ちょっときな臭い動きを感じるかも」
しばらく口数が少なくなってきていて目を閉じていたヘルメスは──その目を見開いてから神妙な声で僕たちへと告げるのだった。




