コロシアム22
「出来た」
「生まれた」
「叶えた」
「おめでとう」
「またね」
「さようなら」
──
─
精霊達の声が遠くに感じる。
実際に遠くに感じるのは確かなのだろう。
精霊達の居なくなった室内は真っ暗で外の月明かりが射し込んで仄かに目が暗さに慣れて来たからなのか薄暗くも室内の状況が見えてくる。
『皆──大丈夫?』
「シエル様……残っているのは私たちだけです」
ナビの声もどこか弱々しい。
自分の声も自身で驚く位に弱っていた。
それもそうかと思う。
あれからほぼ半日以上…魔力を皆流しきってはイメージを流しては魔法を発現していたのだから。
周りには順に倒れていった皆が居た。
そこにはマザーである、シリウスもヘルメスも居た。
僕とナビに限っては2人ならば無尽蔵の魔力を生むことも不可能では無い──、だからこそ最後までやり遂げられたといえば良いのか。
ただ、その反動は精神的にはお互いに大きかったようで今みたいに疲弊しているのが現状だ。
皆に限って言えば魔力切れだ。
復活するまでは目覚める事もないだろう……。
──
─
「あのー……すみませーん?」
そんな疲れきった自分とナビの耳に工房の扉から声が聞こえる。
そして締めていた鍵を解錠する音も続けて聞こえてくる。
「あのー? ブリッケン様ー?」
どうやら、最初にこちらに案内してくれた店員の女の子だろう。
(そっか…、業務が終わって連絡に…)
「また、ごちゃごちゃして……って、えっ?!」
女の子の続けて驚く声も聞こえて来る。
「皆様?! ど、どうしたのですか?!」
『だ、大丈夫……。 皆、魔力切れで──』
「えっ?! 魔力切れって……!! シリウス様?! し、シリウス様……?」
店員の女の子はひとしきり驚いた後に床に倒れているシリウスに目を向けていた。
「だ、駄目よ……。 そんな、で、でも──」
店員の女の子はシリウスの唇に目が奪われていたようだったが──、理性が勝ったのだろう。
首を横に振ってから目を覚ますようにして床に倒れていた皆を甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのだった。
「あれ……、またブリッケンさん──変なものを……って、あれ?」
そして、僕たちの輪の中心にあった白銀の…薄い…透明に近い武器を取ろうとして女の子はそれを空振るのだった。
「え? え?!」
女の子は何度も取ろうとするが見事に手は空を切っている。
『ご、ごめん……それは僕じゃないと扱えないんだ』
「あ、後は私も扱えます」
ナビも追従して発言する。
そう、この武器は正確には僕たちじゃないと認識しないし扱えない。
不可能を可能にした結果のデメリットとは精霊は言っていたけれども、違うだろう……。
どう見ても専用と言えるだろうし、乱用を防ぐためとも見えた。
「キャッ?!」
急に目の前から空振っていた武器が消えて女の子は驚いていたけれども、その武器はそれぞれ僕とナビの手に握られていた。
そして、まるで僕とナビを認識したのを確認したように透明な刀身は白銀色に輝きと色を帯びていくのだった。
「……綺麗」
女の子はひとしきりその光景を見て呟いた後に我に返っては慌てて倒れた皆を横に安静にさせるために動き始めるのだった。




