コロシアム21
「シエルの匂いがする──」
「暖かい……」
「こんにちは?」
「違うよ、こんばんは?」
「願い事──?」
「祈り事……?」
「叶える?」
「叶えたい──?」
流石にここまで来たら、自分も見慣れて来てはいたけれども彼らの不思議せいには慣れることはないのだと思う。
まだ形の無いオーブのような精霊達が白銀の魔力に充てられて寄ってきては僕たちの周囲を浮遊していく。
「これが精霊か──」
ブリッケンさんの驚きで小さくなった声も聞こえてくる。
見てみれば、ブリッケンさんは見惚れているのか紅潮しながらもしっかりと現象を記憶に焼き付けようとしているのか目を見開いていた。
『願いを叶えて貰いたいんだ──!』
「願い?」
「武器……?」
「守るため?」
「この世には存在しない物質が必要?」
「作る? 創る?」
「────?」
精霊達が僕たちの願いを聞き入れているのだろうか。
イメージを吸収しているのだろうか?
特にブリッケンさんの願いが多いのか、ブリッケンさんの周囲には多くの精霊が集まり始めていた。
でも、その中で何故かナビの周りにも精霊が集まって来ていた。
「この子のも欲しい?」
「欲しがってる?」
「シエル……守りたい?」
「一緒に居たい?」
「──っ!」
隠し事は出来ないのか精霊がナビの心を覗いているようだった。
多分、当たっているのだろう。
ナビが目を見開いて驚いてるような素振りを見せていた。
「ブリッケン──」
「武器は2つ必要」
「シエル──ナビ……」
「ん?? なんだって?」
自分の武器だけで頭がいっぱいだったであろうブリッケンさんのどこか素っ頓狂な声が聞こえてくる。
「──す、すみません……」
ナビには珍しく尻すぼみな声が聞こえてくる。
けれども、誰も批難するような声はあげることは無かった。
自然と繋がっている影響なのかナビの想いや、そして望む武器のイメージも流れ込んでくるのだった。
皆が皆、似たような状況なのだろうか。
どこか心地良さも感じられる繋がりの中、そのイメージに自分のイメージを重ねては皆のイメージをまとめ上げて行くのだった。
「……素敵」
「素敵は素敵──」
「魔力も素敵」
「不可能を可能に」
「願いを形に──」
精霊達は今も集まって来ては僕たちの周囲を飛んでいる。
そして、願いとイメージの大きさに応じて白銀の魔力の燐光の輝きも大きくなっていくのだった。




