『コロシアム⑮』
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「ほぅ──賭博エリアのコロシアムか……またこうも分かりやすく動くとはな」
「何か──伺っているのですか?」
「おう──マリの嬢ちゃんか……まぁ、な。一通りはガイウスとドルマン──そしてもう分かってはいると思うがリッチとも情報はある程度共有しているからな」
なるほど、それで俺か──と最後にブリッケンさんは独り言に近い言葉を零しつつ、自分たちの話を聞くのだった。
「まぁ、俺が適任だろうな。それに俺以外にシエル坊の武器は──俺が作らせねぇ」
『えっと──それは……』
「はっ、シエル坊……俺はもうお前さんとどこまでもと腹は括ってるんだよ!」
最後まで言わせんな、年甲斐もなく恥ずかしくなるだろ──ガッハッハと最後は照れくささを隠すようにブリッケンさんは笑うのだった。
「そうなると──物はここで作るしかないだろうな」
「どういうこと?」
「ん? そのままの意味だ。 リンの嬢ちゃん、ここには敢えて、越して居を構えてるんだ」
ブリッケンさんの言葉に首を捻るリンにシリウスが前に出てくる──。
「我の事もあるが──中央の監視の目が実は厳しいのだ」
「そうだな──」
「え? バルは気付いていたのか?」
「僕もそれは気付いていたかな」
「精霊が──騒々しかった」
バルの頷きにシュンは驚いた様子だったが──それに続いてヘルメスとレイが同意している姿を見て所在なさげになっているのだった。
(精霊が騒々しいか──)
レイの言葉に一瞬だけ思考が飛ぶ──確かに普段生活していても少しだけ様子のおかしい精霊の気配を感じた時は最近は大抵白拍子達の姿を捉えていたのだった。
「えっと──ごめん、私にはまだ分からないや」
「ん? いや中央の監視の目が厳しいと行動がしづらくてな──それならと敢えて中央に移したんだ!」
「我もその決断をした時には驚いたがな。実際移してみるとブリッケンが今は手広く商売するにも当たって客人も多くなってな。……逆に彼らの監視が良い感じに阻害出来ているのだ」
「あぁ! シリウスの言う通りだ! そして結果として監視の目にボロが出るからな、こうやって認識や音を阻害しても気付かれない……おっと、そうだ」
何かに気付いたブリッケンさんは奥に何かを取りに行く──。
「あったあった! ハハハ! 忘れるところだった!」
ほれ! シエル坊! ──そう言って自分にブリッケンさんは手のひらサイズの魔力回路の刻まれた部品を渡してくるのだった。
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