『コロシアム⑭』
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「あーと……あれ──どこにやったか?」
ガチャガチャとブリッケンさんが消えた奥から何かを──いや、お茶を探してるのだろう音が聞こえて来る。
(それにしても──)
手持ち無沙汰になってしまったという理由ではないが──改めてブリッケンさんの工房兼自宅を眺める。
(雑多に見えるが──)
そう、雑多に見えるが所々に防犯なのだろうか? 結界の魔法紋も散見されているのだった。
「おー! これだこれだ!!」
そんな風に室内を見回しているとブリッケンさんが遂に探し当てたのか嬉しそうな声がこちらに届いて来るのだった。
「お茶かぁ──お茶は僕も結構飲んでるけれども……嗜好品かぁ──それも逸品かぁ」
どこか浮かれたようにしているヘルメスが居てソワソワとしているのだった。
「シエルはブリッケンさんのお茶は飲んだことあるの?」
『えっ? あー……そうだね──そこら辺はブリッケンさんと長いシリウスに聞くと良いと思うよ?』
「なっ?! シエル殿!?」
どこかブリッケンさんのお茶の何とも言えない生温さを思い出しつつ──コメントに困った自分はシリウスに振ってみたのだが、シリウスの方も予想外の振りだったのか珍しく声が上ずっているのだった。
*
「おー! 待たせたな!」
そしてシリウスの困り顔を見ていると奥からブリッケンさんがお茶を持ちながら現れたのだった。
(湯気は──立ってないな……)
盆に載せられている湯飲みからの湯気の確認をしつつブリッケンさんに自然に目を向ける──。
「ほれ! 飲め飲め!」
好々爺然とした様子でブリッケンさんは皆にお茶を配りつつ──席について自身でもお茶を……。
「うっ……」
普段はブリッケンさん自身が一番最初に飲んで反応するシーンなのだが──横から聞こえて来てそちらを向いて見ると何とも言い難い表情をしたヘルメスが居るのだった。
「うっ──何が悪いんだ??」
それに続いて──いつも通りの声が……ブリッケンさんの声が苦渋の声と共に聞こえて来るのだった。
「……まぁ、いいか。 これは高級素材なのだ……誤差というものだろう。それでだ! どんな用で俺に会いに来たんだ? 話してみろ!」
ガッハッハとひとしきり笑った後に真剣な表情になりブリッケンさんは自分達へと訪問の理由を改めて問い掛けて来るのだった。
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