『コロシアム⑫』
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「ブリッケン様にですか?」
「うむ──ブリッケンは奥に居るか?」
「は、はい……えっと──少々お待ちください! あ、あの! 確認してきますので!」
ナビの言葉に店員の女の子は正気を取り戻したように訪問の理由を理解した後に──シリウスからまたしても言葉を掛けられ少し頬を上気させつつも取り乱すことは無く、急ぎ足でブリッケンさんへと確認し店内の奥へと消えていくのだった。
「……見られてるねぇ」
「……ですねぇ」
リンとマリの言葉もごもっともであれから置いてけぼりの自分たちは周囲の好奇の視線の的にピッタリになっているのだった。
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「むっ! シエル坊が来やがったか!! 早く奥に通していいぞ!」
それから暫くすると明らかにブリッケンさんだろう声が店内の奥から聞こえて来るのだった。
パタパタとそれから暫くすると店員の女の子の駆けてくる足音と息切れしている女の子が現れるのは直ぐだった。
「あ、あの! 大丈夫とのことで──」
「うむ、聞こえていたぞ。それよりも息切れは大丈夫か?」
「は、はい! シリウス様……だ、大丈夫です!」
「そうか──無理はせずにだぞ」
シリウスの労いの言葉に店員の女の子は感動したような表情を浮かべつつ頭を下げて応じているのだった。
「シエル殿──こちらだ」
『ありがとう』
頭を下げている店員の女の子にお礼を述べつつ自分含めて皆でシリウスの後を追いかけて店内の奥──工房と住居の混在したブリッケンさん宅へと足を運ぶのだった。
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