『コロシアム⑦』
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「白拍子の動きは全て中央──いや、女王の下で制御されているように思えるか?」
イアンの言葉に──以前お会いしたノーラさんを思い出す。
『いえ──確かに今思うと全て女王の意思の元となると違和感があります』
「あぁ──その通りだ」
近い事といえば──前回のヘルメスを探し出していた白拍子達の動きだ。
あの過剰な動きはノーラさんが決定したものではない様に思えてならないのだった。
「彼らは全ては女王の──ひいては国の為に身を捧げているはずだが……」
『行動の理念と実際の動きが──そう思うとチグハグな部分がありますね』
「その通りだ──幾つか疑問点がある」
イアンと意見をすり合わせても幾つか疑問点が浮かんで来ていた。
先の言ったヘルメスの件、その他条例や情報の取扱いについて──何よりも中央の闇の部分だ。
リッチさん、ドルマンさん、そしてガイウスさんも言っていた……ハンネスが気付いていた中央の闇の部分──そこが白拍子が見逃すとは思えなかったのだった。
「俺の見立てだが──白拍子の内部でも女王に付く者と、それとはまた別の存在の派閥があるのかも知れない」
『……イアンさんはその存在、もしかすると今回の背後に居るかも知れないのが──』
「いや、そこまではまだ分からん。だが──可能性は捨てきれない」
『…………』
改めて、イアンの言葉を振り返る。
今回のギィーの件、白拍子達の動きの違和感──繋がっているようで……。
「もう、こんな時間か──」
『確かに──』
ふと思考の海に潜りかけていた自分を引き戻すようにイアンの言葉が聞こえて来て時間を確認してみると……確かに時間は思いの外過ぎていたのだった。
「すまないな──だがシエル。お前だけにはとりあえず伝えておきたかった」
『いえ、ありがとうございます。気を付けておきます』
「あぁ──頼む」
そして、その後も軽く雑談をイアンとして自分は代表室から退室して皆の下へと向かうのだった。
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