『賭博エリア㊳』
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「えっと──どちら様?」
「ん? いや、我だが……」
「リンさん──結界内へまずは……!」
「あ……! えっと、とりあえずこっちへ!」
「ん? う、うむ」
そして、リンは扉の先に居た”男性”を結界内へと招き入れて玄関を締めるのだった。
*
「えっと、あなたは──誰ですか?」
マリも同じく男性に問いかけていた。
「む? いや、だから我だが……」
「マリさん、リンさん……落ち着いてください。思い出してください──」
「文面に書いてあった自分の意に応じて姿が取れるようになったって──」
男性? の声に続いてナビとレイの言葉が続く──それを聞いてマリとリンは改めて、男性を観察するのだった。
青白い長い髪は後ろでまとめられていて、肌は白く……そして長身で──そうイケメンだ。
(シリウスだと言われたら声も確かに……)
「えっと、シリウスなの……?」
「なの──?」
もはや、マリは驚いているのか”なの”しか言って無かったが目の前の男性が頷いたのを見て驚いた表情のまま固まっているのだった。
*
「確かに、これは分からないな──」
「我もこの姿は非常に楽なのだ。 ほとんどは本来の姿で居たが──何故だろうか……憧れていたら出来るようになったのだ」
イアンの言葉にシリウスはどこかしたり顔をしつつも答えていた。
「なんだか、それ──僕に似ているね」
「む? そうか貴殿がヘルメスか」
「う、うん──」
「我はシリウスだ──宜しく頼む」
「! ──こ、こちらこそ!」
マザー同士という繋がりもあるのかヘルメスは一気にシリウスと打ち解けていたのだった。
「あ、あの──そのシエルさん」
『ん?』
そんな中、そっとセーレさんは自分に包み袋を渡してくる。
「リッチ様からです──」
「えっと──これは……」
袋の中身は幾ばくかの金銭が入っていた。
「本来はしっかりと口座に振り込みたかったとの事ですが……シエル様の口座はその──詳細が掴めない様でして現金で申し訳ないとの事です」
(あぁ……そっか──)
自分の口座がイレギュラーエリアの指定になっているのを思い出しつつ、少しだけ悪い事をしてしまったと思ったが自分の疑問に答えて貰っていない事に気付く。
『いえ、現金の事ではなく──なぜ、このようなものを……?』
「それは──その……ヘルメス様のこれからも含めた費用だとおっしゃっておりました」
セーレさんの言葉で脳裏に先程のリッチさんの顔が思い浮かんで来る。
息子の事を生真面目と評価していたが……なるほど、親子なのだとどこかで思ってしまった自分が居たのだった。
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