『賭博エリア㊲』
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『ヘルメスとシリウスが自由にエリア間を移動できるようになった事と──リンクスの組織の一員として活動をする……?』
「あぁ……そうだ」
「でも、お兄ちゃん……それって大丈夫なの?」
リンの心配も当たり前だった。
基本的に何かしらの大きな発表とは中央からというのが暗黙の了解になっていたところを、大々的に発表するという事なのだから当たり前の反応だと言えた。
「言いたいことは分かってはいる。だが、先の文面だと既にじじいとガイウスさんが働きかけ──リンクスが責任を負うという名目で発表すると書かれていた」
「何よりも──既にシリウスがこちらに向かっているらしい」
『え!?』
最後のイアンの発言は自分も驚いてしまい、素っ頓狂な声を上げてしまっていた。
「シリウスがこちらにって──いや、シリウスってバレやすくないか?」
「シュン? シリウスは獣のマザーなんだよな?」
「あぁ──青白い毛並みの大きな狼だ」
「あぁ……、だが文面にはそう書かれていたぞ?」
シュンとバル……そして最後にイアンさえも疑問の声を上げた時に──コンコンと玄関の扉がノックされる音が聞こえて来るのだった。
「ええと──私出てくるね?」
「待て、リン──おかしい」
「え?」
「外は人除けの為に先程メンバーを周囲に展開させている」
「…………」
ゴクリ──と皆の喉が鳴ったタイミングだった。
(「我だが──先程ノックしたのだが……皆居るだろうか? 気配ではなく嗅覚で居るとは思うのだが……」)
皆の脳内に声が響いたのだろう。
皆、一様に驚いた表情になった後にリンがイアンに大丈夫だと断りを入れて玄関を開けに向かうのだった。
「ごめんね! 今開けるから──!」
「あっ──! 少々お待ちを」
「え?」
ナビの呼び止めにリンが立ち止まり──それに安堵した表情を浮かべてナビは結界の範囲を広げたのだった。
「これで大丈夫です!」
「ありがとう、ナビちゃん!」
そして、リンは玄関を開ける──。
「…………あれ?」
そして、最初にリンから出て来た言葉は戸惑いの言葉だった。
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