『賭博エリア㉜』
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「なんだか──昔を思い出すな」
「あぁ……小さい頃の話か?」
「あの頃は意味もなく親父とも夕日に向かって並んで夕焼けに映った自分の影とか見ていたな……」
「父様……」
「あっ──すまない、バル」
「いや、大丈夫だ。いつか、いつかで良い──俺は父様と少し意味は違うが……並び立ちたいと今は思っている」
皆が横並びに手を繋いでる中──シュンとバルの会話が聞こえてくる。
「わ、私……ちゃんと飛べるかな……」
「リン──が怖がると私も……」
「私は──大丈夫。信じてるから」
「ぼ、僕も……大丈夫──大丈夫」
ヘルメスの反応がマザーとしては珍しいと一瞬思ってしまったが……これも個性なのだろうか?
ふと、疑問に思う中で一緒に手を繋いでいるナビと視線が合う。
「シエル様、私の方はいつでも──」
『うん、分かった。ナビ、力を増幅させよう──そして、それを皆に供給する』
「はい──!」
『供給は念のため──そしたら、そのまま皆に循環させる』
「分かりました!」
先の願いの時は循環が成功していた──けれども何があるのかは分からないので皆に力を供給もする。
先の循環に関しても合わない時は合わないものなのだ、念には念をだった。
そう……今は手を繋いでいたら循環は出来ても──万が一でも手が離れてしまった場合はきっと役立つだろう。
「あっ──この感じ……」
「気持ちいい……」
マリとリンの少しだけ艶めかしい声が聞こえてくる。
「シエル様、コントロールの方は大丈夫そうです!」
『分かった! 細かい調整は頼む!』
「はい──!」
そして、ナビの声を最後に自分は──自分たちは賭博エリアの上空へと飛び立つのだった。
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