『賭博エリア㉒』
────
「いざ話し始めるとすると──どう説明したらよいか……そうだな」
「シエルくん達は精霊についてどこまで把握しているかな?」
『精霊ですか……?』
リッチさんはこちらの情報量を推し量ろうとしているのか──まずは精霊について質問をしてくるのだった。
『精霊についてはここ百年の間に不意に現れたものと──』
「そう──そこだ。そして今はシャドウと言われている存在は?」
「彼らもまたここ百年の間に──と現状のヒノモトの知識では……」
「そうだ──おかしいと思わないかね? そして例の白銀の龍の存在はいつからかね?」
『それは黒い渦が世界に生じた時に──』
「それは誰が流した情報だ? 本当にそうだと思うかい?」
「それは……」
リッチさんの話にナビと自分で答えていたが──話が深まるごとに答えづらい内容になっていく。
「リッチ様、すみません──これ以上は中央への不信に繋がる恐れが……」
「む──マリくんか、成長したな」
「はい──」
「だが、すまない。ヘルメスの話をするに辺り必要な部分だと思っている」
「……分かりました、今は私も一個人としてここに居ることに致します」
「……感謝する」
そして可視化された向こうではリッチさんが大きく礼をするのだった。
*
「言葉が難しくなるが──すまない。誤魔化しを出来る限り無くして言うと中央の解釈、もしくは公表している内容には私は無理があると思っている」
「それは……そうですね」
ナビも引っ掛かる部分は常にあったのだろう、ぎこちなくも頷くのだった。
「そして、一度疑いを持つと見える世界は変わってくるものだ」
「精霊とシャドウの関係──そしてマザーだ」
「通常の精霊は縛りが無い、そして契約精霊も特殊な事情が無い限りは離れても存在している」
「基本的にはお互いに結び付いた縁もあって近くに居ることが多いがそれは世間でも見知った情報だ」
「それがマザーに限るとそうではない──おかしいとは思わないかね?」
「そう言われると確かに……」
リッチさんの説明にリンも少しずつ疑問を感じ始めたのか困惑の声をあげていた。
「えっと──ごめん、聞いてて僕の話だと思うけれども……」
「それって僕はマザーだから……賭博エリアから離れられないのはおかしいということなのかな?」
自分達の話を聞いていて──当たり前であろう、自分のことなのだ。
ヘルメスはどこか自身を探るような素振りをしながらも会話に入って来るのだった。
coming soon




