『美しい世界⑬』
煌びやかだった
その照らし返すものは
時には──災厄だとも言われていた
けれども今は──奇跡と云われている
美しさはどちらにも平等に微笑みかけるのだろう
(──!!)
(美しい……)
ただただ──そう思った。
(これが、学院──だと?)
広大な敷地だった。
ヒューズさんが言うには、これでも”ほんの一部”との事。
眼下に見えるのは街と形容しても良いほどに、人類の生活圏が窺える広大な世界が広がっていた。
それもそうだろう。
一般に生活している者、学院に通う者。
それらは──もう既に街……都市……いや、国家の中枢に近いものを感じたのだから。
そして、その街並みを日の出が射し込み〝何かが〝反射して光を照らしている。
(”キラキラ”しているな……)
(「はい、これは魔力の流れ──淡い層みたいなものを照らしている影響だと云われています」)
ナビさんがすかさず補足──いや、その名前のごとくナビをしてくれ……。
(ん……?)
(ナビさんや? ナビさんはどうして──ナビなんだい? 俺自身が、そう名付けた記憶もないのだが?)
(「はい、実際──私は生まれた時は”Noname”名前を持たない存在でした。
けれども、シエル様を助ける過程で──シエル様と、あの世界で”共に”過ごしている中で。
私は導きたいと、サポートしたいと心から想い──ナビと名乗ることに致しました。
結構、素敵な名前だと自負しています!」)
どこか得意げに”えっへん”というナビの姿が脳裏にチラついてしまったが──ナビはそう答えてい……。
いや、待て”共に”──?
(〝共に〝とは──どういうことだ? ナビは、俺と一緒に居たというのか?)
(「はい、居ましたよ……? いつも悩んだり、苦悩している時──私は言葉を投げかけたり、又は”心の声”を伝えやすくする為に支えていたり、私なりに”サポート”を──」)
──途中からナビの声はラジオの音楽のように俺の耳から流れていった。
……理由は明確だ。
(ん? なんだって……?)
確かに──合いの手のように。
”頑張らないと”
“大丈夫”
”うん、分かってる”とか──。
確かに、一人で悩んでいた時に──自問自答の際に声があったような……?
いや、何かもっと重要な”事”を、見落としているぞ……?
(なんだって? ”心の声”といったか?)
まさか──いや、そんな……バナn。
いや、おどけても何も変わらない。
変わるはずがないだろう──こんな時はあれだ……”スルーに限る”。
そう──偉人たちも言っていたじゃないか”時が解決する”と。
(いや、この際は臭いものには蓋を……?)
(「…………」)
気のせい──だよね?
どこか──ナビさんの視線なんてないのに、何かを感じている自分が居るぞ……。
(ん? 待て、そうなると自分の”シエル”という名前は──どういう意味なんだろうか?)
(「私には分からないです」)
おぉ? ──っと、気のせいだ。
今は──ナビさんには聞いていなかったぞ?
(”心の声”だったぞ……?)
危ない──危な……いのか?
(ありがとう、ナビ)
出来る男は”スマート”にこなす。
そう──返事も”スマート”にだ。
そう──自己啓発本に書かれていた気がする。
(そうだな……名前、気になるな)
眼下に見える──この美しい世界を感じながら。
『ヒューズさん──実はお聞きしたいことがあります。自分の……僕の名前”シエル”の由来はなんなのでしょうか?』
「うん?」
そう言いながら──こちらを見るヒューズさんに俺は自分の名前の由来を尋ねるのだった。
ナビ──彼女はいつだって傍に居た
そして──きっと、これからも傍に居続けるのだろう
それが彼女の願い導く者なのだから




